湯治客案内-2
ほどなくあのサラリーマンからのメールが届いた。
[剛田様。ご丁寧なお返事ありがとうございます。うかつでした、気がつきませんでした。村役場で公務を勤めていらっしゃるのですから、真っ昼間から入浴に来るわけありませんものね。私も会社員なので出張の帰りでもないと、平日昼間に温泉なんて無理ですものね。ご便宜いただいたようなので、せっかくですからお会いするだけでも満足とします。峡谷割目温泉前を通るバスは本数も少ないので、その時間に間に合うように調整します。いつも公式サイトやもう一つ別のサイトを楽しみにしております。当日はよろしくお願いします]
どうやら、会うだけだとガッカリしているようである。
裏サイトを通してのメールだから、あんまり杓子定規なメール返すのも悪いと思い、剛田は丁寧ながらぶっちゃけた返事を出した。
[萬郷村・峡谷割目温泉の管理人・剛田です。問い合わせのメール、ありがとうございます。村役場観光課の黒澤さんに連絡いたしましたところ、時間を都合して割目温泉にお客様案内のために来てくれるそうです。あとご心配なさっていらっしゃるようですが、黒澤さんは観光課の公務としてのほかに個人的にも温泉好きなのは、サイトをご覧になられているならご存じと思われます。温泉をご利用する旅のお客様をご案内いたします際は、公務も兼ねて黒澤さんご自身もお客様とご一緒に温泉を楽しみます。当温泉の禁止事項はご存じと思いますが、水着や衣服はもちろんタオル類も湯の中に浸すことは厳禁となっておりますので、黒澤さんもほかの入浴客と同じように真っ裸になって温泉を楽しみつつご案内いたします。また、広報のためにも温泉内での写真や動画の撮影とそれらの公開は大歓迎ですので、お客様にも思う存分自然のありのままをご自由に撮影してくださってかまいません。風光明媚な秘境の峡谷を十分に撮影していただけるほか、温泉を案内中の黒澤さんは真っ裸ですので、お客様がご興味をお持ちになられた黒澤さんの肥えた身体の部分や隅々まで撮影していただいてもかまいません。それでは、ご御来村を心からお待ち申し上げます]
ちょっと遠回しにあけすけすぎたかなと思いつつ、剛田はメールを返した。