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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第11話-73

『お、お願いです……お願いですからっ……』
「「!!??」」
 ちり紙で、股間の水気を拭っていた矢先、別の方向から声が聞こえてきた。桜子だけでなく、背後の大和も、息を呑むように、強張った雰囲気が生まれている。
『ヒロシさん、お願いです……!』
 別方向からの声の主は、こちらに気づいていないようだ。何やらしきりに懇願しているのは、女性の声で、その相手は“ヒロシ”という、名前のニュアンスからして、おそらくは男性であろう。
『どうしたんだい、ミドリ。神様じゃなくて、この僕に、何を“お願い”するっていうんだい?』
 トーンがやや低い、それでも“美声”というべき透明感のある、“ヒロシ”という男性の声だった。
『わ、わかってるくせにっ……!』
 “ミドリ”と呼ばれた女性は、恨めしげな声を挙げている。
『も、もう、我慢できないんです! お願いです、…させてください、お願いです!』
『え? なに? 肝心なところが、よく聞こえないよ』
『い、意地悪!!』
 言い合っている様子ではあるが、険悪な雰囲気ではない。“ミドリ”がしきりに懇願していることを、“ヒロシ”が許さないという、どこか、戯れているような感じがあった。
『あ、うっ……くぅぅっ……!』
 不意に、“ミドリ”のうめき声が聞こえた。
『どうしたんだい、ミドリ。おなか押さえて、かがんじゃって、さ……』
『い、いじ、わる……う、うあっ!?』

 ブピッ!

 と、なにか、空気のはじける音が、静けさの中に響き渡った。
『あ、やっ、いやっ、いやああぁぁぁあぁぁ!!』

 ブボッ、ブビッ、ブビィッ、ブボァァッ!!

『あ、あ、ああぁぁ……』
 くぐもった破裂音が、継続的に響き続けた。明らかにそれは、“ミドリ”という女性が起こしてしまった、“決壊”の証というべきものだった。
『ぐすっ……う、うぅ……』
 嗚咽が漏れ聞こえてきた。“ミドリ”という女性は、自分のしてしまったことに、耐え切れなくなって、泣き出してしまったのだろう。
『う、うう……ヒロシさん、いじわる、です……』
『ふふ。ごめんよ、すこし、やりすぎだったかな』
 だが、そんな“ミドリ”の、粗相に塗れた姿をおそらく見ている“ヒロシ”の声には、それを厭うものは聞こえない。むしろ、粗相をしてしまったことを、いたわる情愛すら感じられる。
『お詫びに、ちゃんと綺麗にしてあげるから』
『う、うう……ちゃんと、ですよ……』
『ああ』
 言うや、なにやらごそごそとやり取りを始める、“ミドリ”と“ヒロシ”であった。
『しかし、まあ、派手に漏らしたね』
『誰のせいだと、思ってるんですか……トイレに行かせてって、言ったのに……こんなところに連れてきて……』
『ここなら、あるかと思ったんだよ』
『そんなの、嘘です……』
 やがて、二人の会話が再会される。やはり、“ミドリ”と言う女性は、粗相をしてしまったことが、その会話でもはっきりと分かった。
『でも、別のところもベチョベチョだったけど、どうしてかな?』
『そ、それは……!』
『お腹が痛いのを我慢しながら、アソコを濡らすなんて、やっぱりミドリはヘンタイだな。父さんの館にいたときは、もっと清純な人だと思ってたのに』
『い、いや……いわないで、ください……』
 会話の内容が、倒錯したものになってきた。
『ふふ。ごめんよ、ミドリ。そんなミドリだから、僕も好きなんだけどね』
『ヒロシさん……』
『我慢できずに漏らしたお仕置きは、帰ってからだ。いいね?』
『は、はい……あ、あの、これ、どうしましょう?』
『仕方ないから、その場に残しておこう。バチが当たるかな?』
『かもしれません……』
『まあ、ミドリと一緒にバチが当たるなら、それはそれで本望さ』
『もう……知りません……』
 言いつつやがて、二人の気配が、その場を離れていった。
「………」
「………」
 垣間聴いてしまった、倒錯的な世界。ふと、匂い漂ってくるものが、これが現実であったことを、二人に知らしめる。
「さ、桜子、もう、大丈夫かい?」
 いつまでもこの場にいるわけにはいかないだろう。別の場所でされた倒錯した行為の結果を、自分たちのものにされても困ってしまう。
「う、うん。も、もうちょっと、待って」
 ごそごそ、と、背後で桜子が身支度を整える音に、奇妙な昂奮を感じてしまう大和。ポケットの中に潜む“お守り”を握り締めるが、今はそれを使うときではない。
「い、いいよ。ごめんね」
 だが、桜子が隣に立ったとき、我慢できないように、その手を強く握り締めた。桜木の肌の感触を、手のひらにイメージさせることで、煩悩をやり過ごそうとしたのだ。
「や、大和?」
「いや、その、うん。か、帰ろうか」
「そ、そうだね。えっと、甘栗、響さんたちにも、買っていってあげようよ」
「あ、ああ、そうだな。そうしよう」
 二人は、互いに絡ませた手から伝わってくる艶めいた劣情を、まぼろしの中で交錯させながら、本殿を後にしていった。
((すごいものを、聴いてしまった…))
 不意に触れてしまった、倒錯的な世界の幻影。それは、道すがらいつまでも、二人に絡み付いて、解けようがなかった。


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