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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第11話-58

「にぃにぃ……」
 響は、その寝顔を覗き込みながら、疼いて止まない胸の高鳴りを、抑えられなくなっていた。
 そのまま顔を、もっと近くに寄せる。
「ん……」
 そして、薄く開いている隼人の唇に、そ、と自分のそれを押し付けた。
 一秒にも満たない、わずかな唇の触れ合い。それだけで、響の胸には、言い知れない安堵が込み上げて、暖かな感触に満たされた。
 隼人が起きているときには、とてもできない行為だ。しかし、響は、隼人の眠っているときを見計らって、何度も、今のような“唇での接触”を繰り返していた。
 それはささやかな、隼人に対する響の“情愛のしるし”でもあった。
「にぃにぃ……ひびき、にぃにぃのこと、好き……」
 “好き”という言葉に、兄妹としての感情が消え去って、男女としての情念に変わっていったのは、いつからだったのか。
「好き……にぃにぃ、好き……」
 もう、それは、憶えていない。
「好き……好き……」
 響は、胸の奥から湧き上ってくる、強い感情に揺さぶられながら、眠っているはずの隼人に向けて、確かな気持ちを何度も囁いていた。
 そう。眠っている、はずの、隼人に。
「響」
「!」
 隼人の唇から名前を呼ばれ、始めはそれが寝言だと思った。

 ぎゅ…

「え、あっ……!?」
 しかし、不意に身体を強く抱きしめられた響は、その腕に篭もる隼人の意思を確かに感じて、彼が実が起きていたのだということを、思い知らされた。
「に、にぃにぃ、起きて……!?」
「好きだ、響」
「!!」
 耳元で、はっきりと聞こえた、隼人の確かな想い。多分、思いつく限りそれは、初めて形にして聞かせてくれた言の葉だった。
「きちんと言ってなかったよな。だから、何回でも言う」
 抱きしめる隼人の腕に、力が篭もった。響の身体が、布団ごしに隼人の身体に密着して、心地よい息苦しさを響に与える。
「響のことが、好きだ。好きで、好きで、俺はもう、どうにもならん」
「にぃにぃ……」
 込み上げてくるもので、胸が詰まりそうになった。
「ひびきも……好き……にぃにぃのこと……大好き……」
 頬を伝う熱い雫。それを拭うこともせず、響はその胸にすがり付いて、何度も何度も、熱い想いを口にしていた。
「響……」
「にぃにぃ……」
 お互いに顔を上げ、潤んだ瞳で見つめあう。言葉はもう、必要がなかった。


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