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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第11話-3

【櫻陽大学 対 双葉大学】

先攻・櫻陽大学
1番:船 木(遊撃手・3年)
2番;細 井(中堅手・2年)
3番:御 門(右翼手・2年)
4番:仲 里(捕 手・4年)
5番:大 石(二塁手・4年)
6番:戸 村(三塁手:2年)
7番:山 岡(左翼手:3年)
8番:倉 田(一塁手:4年)
9番:相 模(投 手:1年)

後攻・双葉大学
1番:岡 崎(遊撃手・4年)
2番:栄 村(右翼手・4年)
3番:屋久杉(一塁手・4年)
4番:蓬 莱(捕 手・2年)
5番:草 薙(投 手・2年)
6番:吉 川(三塁手・3年)
7番: 浦 (左翼手・3年)
8番:片 瀬(二塁手・1年)
9番:木 戸(中堅手・1年)

 櫻陽大学の注目選手は、右投左打の好打者・御門一太郎である。ルーキーイヤーだった昨年から、古豪チームのクリーンアップを務める彼は、昨季の首位打者でもあった。
 櫻陽大学は確かに古豪だが、前回の総合優勝から随分と間が空いてしまっている。どうしても、投手のタレントが不足している課題を解消できず、伝統と言うべき強打は健在だが、それだけで勝ちきれない試合が多いのも事実だった。
 ところが、“希望の星”というべきか、今年は有望なルーキーが入学してきた。昨年度の全国高校軟式野球大会で好成績を残した、東北地区代表校のエース左腕・相模大介である。
 その相模大介だが、初戦の法泉印大学戦こそは、初陣と言うこともあってか立ち上がりはよくなかったが、昨季優勝大学を相手に序盤の3失点のみで抑えるという好投を見せた。“隼リーグ”随一にして、絶対のエースが存在する法泉印大学の前に、自慢の強打が沈黙して零封負けを喫したが、彼自身は上々のデビュー戦であったと言える。
 第2戦は、櫻陽大学にとって“ライバル”というべき、城南第二大学と対戦した。場慣れした様子を見せた相模大介は、課題の立ち上がりで2点こそ失ったが、以降は完璧な内容で相手打線を封じ込め、中盤には打線がようやく奮起して6点を奪い、ライバルに完勝した。
 第3戦は、仁仙大学だった。圧倒的な打撃成績を残している4番・安原誠治を無安打に抑えるなど、この日の相模大介は絶好調だった。しかし、3番・六文銭孝彦に喫したソロ本塁打が唯一の失点となり、関根・福原・水野の3投手を前に打線が好機をつくりながらもそれをものにできず、結局は0対1のスコアで、惜しくも敗れてしまった。
 皮肉なもので、念願の“好投手”を獲得した櫻陽大学は、しかし、今季に限って言えば打線の勢いが低調だった。やや荒れ球なところのある相模大介の、一定しない投球リズムも、その一因と言えるかもしれない。

 今日の試合もまた、“投手戦”というべき様相を呈して、イニングは進んでいた。

【櫻陽大】|000|000|   |0|
【双葉大】|000|000|   |0|

「ストライク!!! バッターアウト!!!」
 左腕から繰り出される、相模大介の“クロス・ファイヤー”が、吉川の腰を引かせ、力のないスイングとなったそれは、空しく宙を切った。ミート力に優れている吉川だが、相模大介とは全くタイミングが合わないようで、この試合で彼はいずれも三振を喫している。
 塁上にいる桜子と大和を生還させることが出来ず、双葉大学は6回の裏も無得点に終わった。
「相模ってのは、なかなか活きのいいピッチャーだな」
「“みちのくの岩沖”って、言われてる人ですよ」
「むむ。だが、“岩沖”を名乗るには、球が荒れすぎだ」
 雄太と結花の会話である。マウンド上の相模大介が、自分にとって大きな憧れといえる名古屋ドルフィンズの“岩沖”に比されていることを知って、雄太が少し気色ばんだ様子を見せていた。
 昨年まで、高校の軟式野球部にいた結花は、当然、相模大介の名前を良く知っていた。
 結花の母校・久世高校軟式野球部は、関東地区大会には何とか進んだが、初戦で敗退していたので、全国大会とは結局“縁”がなく、従って、相模大介と直接対峙したことはなかった。
 それでも、軟式野球関係者からはよく名前の挙げられた人物であったし、監督の美作からも左腕対策の参考資料として、投球内容の映像を見せられた覚えがあった。
 まさか、その相模大介が、櫻陽大学に進学していて、同じ“隼リーグ”に所属することになって、こうやって対戦することになるとは思っていなかったから、その時に見せられたビデオを、もっとよく見ておくんだったと、結花は少し悔やんでいた。
 “みちのくの岩沖”と称されるように、相模大介の特徴は、角度のある“クロス・ファイヤー”のストレートと、沈むような軌跡を描く高速スライダーだ。それぞれが適度な荒れ球を挟みながら投じられるので、タイミングをあわせづらく、双葉大の各打者も苦戦を強いられている。
 もし、この相模大介に“制球力”がより高いレベルで備われば、“隼リーグ・ナンバーワン投手”との呼び声高い、法泉印大学の左腕エース・天狼院隼人と並び称されることになるだろう。それだけの素質を持った、好投手であるのは間違いなかった。


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