夏の1日と彼の優しさ?-9
猛は嵐士の声を聞きなながら嵐士の周りで聞こえる春香の声に気付き、抵抗なく携帯を美咲に差し出した。
「ん」
「私?」
「櫻井からだって」
猛の声しか聞けず、話の内容が分からない美咲は猛の言葉を聞いて恐る恐るその携帯を受け取って耳に当てた。
「春香?」
『あ、美咲。いくら人が多くて下鷺がいるからって私達が着くまで気を緩めちゃ駄目よ』
少し低いトーンの声の春香に、美咲は小さく微笑んだ。
「大丈夫。ありがと」
『じゃあ清水に代わるわ』
『は?何で俺に代わって――あー、俺ら少し遅れっから先に猛と楽しんでてくれよ』
「分かった。春香達をお願いね」
『おう、任しとけ』
美咲はここで会話を終わらせ、通話を切って携帯を猛に手戻した。
携帯を受け取って、猛と美咲はそのままウォーターズタウンに入っていく。中に入れば出入り口以上に人がごった返していて二人並んで歩くのが困難なほど。ここではぐれるのは良くないと思った猛は咄嗟に美咲の細い腕を掴み更衣室まで歩く。
「し…っ」