夏の1日と彼の優しさ?-27
驚きを隠せないといった表情で詰め寄る嵐士に猛は言葉を濁して顔を逸らす。
そんな二人のそばでは美咲が春香と棗に詰め寄られていた。
「どういうことなのよ。下鷺があんたのこと名前で呼ぶなんて」
「美咲ちゃん、下鷺くんと何かあったの?」
「えっと、その…」
ずずいっと詰め寄られ、美咲も顔を逸らすと同じように顔を逸らしていた猛と目があった。まあ、猛は相変わらず前髪が長いので気がするだけだが、それでもお互い同時に苦笑いしたことでますます3人は2人の仲を疑うことになった。
「美咲?説明しなさい」
「み、美咲ちゃんが男子と仲良いなんて…何があったの?」
「おい猛!どうなってんだよっ?」
さらに詰め寄る3人に、美咲と猛は言葉を詰まらせ返答に困る。だけど、この友人達にさっきの出来事を素直に白状するのは猛にとってはもちろん美咲にもよろしいことではない。というか素直に白状すれば猛が集中砲火にあうのは目に見えている。そういうわけで、美咲は口を割ることなく終始苦笑いで済ませ強引に3人の背中を押してプールの方へと戻った。
それから、頑としてプールに入らないと言い張る猛に呆れた美咲は、さっき溺れたのが後を引いてるらしく猛と一緒にいることにした。最初は美咲が心配でプールに入ることを拒んでいた春香や棗だけど、美咲が懸命に大丈夫だと宥めたことと猛が平然と言いのけた「今度こそオレがちゃんと守るよ」の言葉でようやく3人は遊ぶためにプールへと足を向けた。
…ただし、守られる張本人は思いがけない言葉に誰にも知られないように軽く頬を染めていたが。
「美咲は泳がないのか?」
遊びに向かった3人を見ながら、猛は隣に座って息をつく美咲に声をかけた。
「もうあんな目にあうのは、ね」