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星を数えて
【初恋 恋愛小説】

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星を数えて act.2-2

「叶」
「ん?」
「頑張んなよ」
「ん」
部屋を出るとき、月子はそう言ってくれた。





頑張るよ。
今まであんなにまったんだもん。





まだまだやれるよ。





「ありがとうございました…あ」
パッと受付を見ると、崇がこっちを見てにやりと笑っていた。
「じゃ、うちら帰るわー」
みんな自然を装ってはらはらと帰っていく。





「悪いな、気ぃ使わせて」



帰り道、そう言う彼の声は全く“悪い”なんか思っている声ではない。
「大丈夫」
夕日が闇に飲み込まれようとしている。
崇に久しぶりにあったときも、こんな空だったなぁ。
「なぁ」
「ん?」
「飯何つくってくれんの?」
バイクを押しながら私にたずねる。そう言ってる横で携帯で誰かにメールしていた。
「オムレツでいい?」
「んー」
パコッとそれを閉じて、オッケ、と笑顔を向ける。ホント愛想いいなって、そうひねてしまう自分に少し嫌気がさす。
「バイクとめてくるわー」
彼はドアの横にバイクをとめて、登りかけた私の横にまたやってきた。





こういうところが憎めないんだろうな。





客観的なのか、自分の気持ちなのか、私はもうよくわからなかった。今は、崇が横にいることにすごくときめきを感じていた。
「そのへんでくつろいでて、すぐつくるから」
「はいはい〜」
プチン、とTVのスイッチを入れて、しばらくすると笑い声が聞こえた。チャカチャカと炒めたり混ぜたりしながら、この時間は神様が、ほんの少しだけ私に幸せをプレゼントしてくれたんじゃないかって思った。
「できた?」
お皿にポンと移した瞬間にひょっこりキッチンに現れた。
「うん、今できたよ」
「じゃ持ってくな」
そう言ってお皿を運ぶ崇。私はスプーンとケチャップを持って、オムレツの湯気の後をついていく。
「いただきます」
「いただきまーす」
意外と静かに食事をとる崇。TVの音がヤケに大きく聞こえてくる。

「なぁ」
「ん?」
ペロリとオムレツをたいらげた彼は、少し身を乗り出して話しかけてきた。
「俺のどこがいいの?」





どこって。





「私達の関係を彦星と織姫に例えたとこ?」
最後の一口を頬張って私は答えた。すると、崇はうひゃひゃと笑って、
「俺がいつそんな粋なこと言ったよ?」
そう言ってまた笑った。
「私、崇のこと信じてずっと待ってたのよ。髪だって崇のために伸ばして…」
そこまで言うと、身を乗り出していた彼は深く椅子に座りなおした。
「俺はそんな彦星と織姫の愛?信じられねぇから。だぁってさ、きっと彦星と織姫だって会えばヤってるよ」






ズキっと、胸が痛い。





「そんなこと、ないもん…」
「そう言い切れるか?」
ポケットから煙草を出してライターで火をつける。深く深く息を煙を吸い込んだ。
「彦星だってな、こんな風に」
フーッと息を吹きかけてきた。咳き込む私の顎をグッと持ち上げて。





キスしてきた。





パンッ!!!





気付けば、崇をひっぱたいていた。
「……ッ」
「会う日までこんなことをしてたかもしれねぇよ?」





ヤバイ、泣きそう。


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