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星を数えて
【初恋 恋愛小説】

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星を数えて act.1-1

1 私は


 

ちっちゃい頃から
どんな約束も守ろうって決めてた。


 

たとえそれは
忘れられちゃうものだとしても。

 

でもね

 

 

この長い髪は


 

いったいいつまで伸ばせばいいんだろう

 

 

星を数えて
act.1ladykiller

 

 

「ふぅ」

 

お父さんがいきなり大阪に単身赴任することになって、家族みんなついてくって言ったけど、私は高校変わりたくなかったから一人暮らしすることになった。
近所の挨拶もいって、ダンボールもやっと片付きかけてきた。今は、バイト帰りで、また晩御飯の買い物帰り。
「一人暮らしって大変かも」
夏休みなかばに、一人で住むにぴったりの2階建てアパートに越して来た。でもなんだかんだでもうあと一週間で夏休みは終わってしまう。
「まだ下の階に住む人で挨拶できてない人いるなぁ」
ずっと行ってるのに、いつもいない。誰なのかさりげなく気にかかる。
「やっとついた」
って、一人言多すぎ!と心の中で自分につっこんだ。

そこに、なんだかイチャつく男女が目に入ってきた。
「またメールするよ」
そう男が言うと、私が横を通り過ぎようかってところで濃厚なキス。正直ひきます…
あまり見ないようにして、アパートの階段に足をかけたそのとき。
「お前ここに越して来た?」
ぱっと振り返ると、さっきの男がこっちを見ていた。
「……!」
「…あんた、もしかして」
すっとこちらに歩み寄ってくる。

 

 

嘘よね、幻よね?

 

 

「清水叶(しみずきょう)ちゃんだろ?覚えてるよな、俺のこと」
「…崇……」


 

忘れるわけがない。


 

幼馴染みで、私の好きな人。


角谷崇臣(すみやたかおみ)。

 

「ま、俺下の階に住んでるから。いつでも来いよ」
トクン…
胸が高鳴る。やっと、やっと近付くことができた。なのに。
「いつでもヤッテヤルから」
その腰まである髪のせいで後ろからはきついだろうな、と18禁すれすれのジョークをとばしてけたけたと笑って部屋に入る崇。
ガチャン…
その音は、私の気持ちをも崩していった。
「嘘よね…」
崇、忘れたの…?私との約束。


 

あの時の、約束。

 

 

「ねぇ、やっぱ小2くらいの記憶って忘れる?」
「はぁー突然だね。私はうっすらと覚えてるけど」
私は、友達の聡子(さとこ)と買い物に来ていた。と言っても、新居に必要なものを買い揃えるのに付き合ってくれるんだけど。
「そうだよね」
忘れるなんて、ちょっと信じられないよね。そう呟くと、聡子は怪訝そうな顔をした。
「信じられないといえば、柚亜(ゆあ)もだけどね」
どこいったんだ、と文句を言われている彼女は柚亜、いい子なんだけどフワフワしてて謎なとこもあったり。
「いいじゃん、きっとどこかで元気だよ」
「そうだよねー」
私達は笑いながら、可愛いバスマットなんかを見て歩いた。
「げっ…あんなとこでチュウしてるわ」
ふっと聡子の視線の先に目をやると、いちゃいちゃした二人。
「あれ、角谷先輩じゃん」
さすがねーと、彼女は可愛い家具に目を戻した。

私はというと。
「いつまでも見ないの!」
グイッと聡子に顔の方向を変えられた。
「た…角谷先輩ってやっぱりいつもあんななの?」
「いまさらだねー!紅葉のホストって言われるほどの女たらしじゃん!」
ズキ…
やっぱりそうなんだね。
ずっと見てきたから、知ってるけど。他人に言われると思いしらされる……。
私の胸はギシギシ音をたてる。
「…叶?」
「ん?あ、このスタンド可愛いからこれにするよー」
もうごまかすしかできなかった。
久しぶりに涙がでそうになった。

 

 

ずっと見てきたんだよ。約束通り待ってたよ。


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