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溺れる爪痕
【ファンタジー 官能小説】

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幻影-5

 表情をなくし、言葉を発さなくなったアズール。シウは不安と恐怖でいっぱいだった。

何をされているのか分からない不安。訳の分からないまま、また意識を手放してしまうのかと思うと怖くて仕方がない。

しかし自分はこうされる為にここにいる。その為に生かされている。

アズールはこの実験が終了したら殺してくれると約束した。

けれど・・――このまま、何の前触れもなく意識を落とし、戻らなくなってしまったとしたら。――そう思うと、やはり怖い。

「アズールっ・・・・や、ぁっ待って、おねが・・・っアズール!」

まるで自分を映さないでいた灰褐色の瞳が、何度目かの呼び掛けでやっとのろりと焦点を合わせてくる。

「なに?シウ」

「あの、・・・何か、言って」

「何か、って?」

「・・・・何か訊いたりとか、しろよ。実験なんだろ?」

「は、やけに協力的だね。昨日は死にそうとか言ってたのに」

「それは・・・・っ」

自分を見てほしいと告げたかったが、それは躊躇われた。

そんなことを思案してしまった自分が自分でも不可解で、滑稽でしなかないと、口を突く前に思い止まったのだが。

突き放すような態度と決して逃がしてはくれない身体がアンバランスで、シウはどう言葉を紡いでいいのか分からず口ごもる。

「シウ?」

「・・・あたしの命、やるんだから。・・・・ちゃんと有り難く観察しろよ」


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