幻影-3
出会ってからまだ幾ばくもなく、彼の本質が何処にあるのかシウには分からない。
それでも理由もなく、どこかで安堵していた。
隙のあるようで抜け目のないこの男を、甘く見ていた・・ということなのだろうか。
シウが反芻している間にもアズールは冷ややかに見下ろしてくる。
観察するように。
呼吸の僅かな乱れさえも、捉えようとしているかのように。
しかしその目は虚ろで、シウを見透かしながら何処か遠くを見詰めている風にも見える。
一体どちらが本当の彼の姿なのだろう。
今のアズールは、そう、言うなればこのままシウを殺すことも厭わない――そんな雰囲気を全身から醸し出している。
「・・・・お前、なんなんだよ」
不貞腐れたようにシウが渾身の悪態を付けば、アズールはくっと小さく喉を鳴らした。
「君はさ、毎日約束しないと覚えられないの?」
・・・・分からない。
この男が何を考えているのか、分からない。
優しく労るような素振りを見せたかと思えば、一変してどこまでも追い詰めて弄ぶ。
昨日のように、混乱するシウに対して、面白そうに笑ったりもする。
「っ痛・・・・!」
最早二の句も継げずにいた彼女の口に突如激痛が走った。
「んぅ、・・・・はっ」
驚き目を見開くも被さる影に何も見えない。呼吸さえ吸いとられてしまうほどの唐突な口付けに、シウはせめて手足をバタつかせる。