無謀な計画-3
久保田のものを受け入れたばかりの、秘密の場所。
蕩けるような快楽。
同時に、言葉にしがたい気持ちがもぞりと胸の中でうごめく。
考えてはいけない。
与えられる淫楽に意識を集中させる。
佐伯の背中に両手を回し、形の良い耳に唇をつけ、囁くように話す。
激しく出し入れされる指が、ぐちゅり、ぐちゅり、と絶え間なく淫らな音を響かせる。
「いいわ……すごく、いい……あのね、今度の、月曜日……社長に、いっぱいサービスしあげるの……エッチしてるときは、それしか考えられないひとだから……それで……」
「それで?」
マヤは自身が考えた計画を、すべて佐伯に話した。
無謀ともいえる計画。
うまくいけば、社長から金を奪い、部長に泡を吹かせ、すべての罪を久保田に着せたうえで、あらゆる面倒事から手を切ることができるはずだった。
うまく、いけば。
最後まで聞き終えた佐伯は、年上らしい心配顔でマヤを見つめた。
手の動きがぴたりと止まる。
「そうか……急ごしらえで少々無理があるような気もするが……まあ、いいだろう。ところで、そのなかで君が一番望んでいること、はずせないことは何だい?」
「そうね……社長と部長に仕返ししたいわ。子供っぽいかもしれないけど。お金も大事よ、だけど、最悪お金が手に入らなかったとしても……いまはあの二人への憎しみの方が強いの」
そして、できれば久保田を傷つけずに済ませたい。
できない。
事を起これば、必ずひとり、その罪を被る者がいなくてはならない。
逃げた後も、追いかけまわされるようなことになるのは困る。
「なるほど。その久保田という青年は……マヤの罪を被ってくれるというわけか」
「いい子よ、とっても……いい子なの」
久保田には、一度でいいから社長たちを殴りつけて欲しいと頼んだ。
わたしを傷つけ、弄んだふたりを……めちゃくちゃに殴って。
それをやってくれたら、わたしは一生あなたの傍にいるわ。
情事の後、夢見心地でいる久保田の耳元で繰り返した。
可哀そうな男は、マヤをぎゅっと抱きしめたまま、それを承諾した。
『先生のためだから……やるよ、絶対に、やってやる』
月曜日、タイミングを見て社長室に来てもらう。
計画通りに運べば、そこには意識を失った社長と、混乱した部長がいるはずだ。
久保田が覆面をし、ふたりを思い切り殴り倒している間に、マヤは金を持って逃げる。
そして警察を呼ぶ。
強盗が入った、と。