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THANK YOU!! ver St.Valentine's Day
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-4



愁と教室に入ると、好き放題に騒ぐクラスメイトたちの姿。
こんな奴らと二年間も一緒なのかと今日何度目か分からない溜息を吐いた。
どこの席に座ればいいのかと黒板を見ると、好きな席に座れという指示があった。

「(・・うわ、軽い先生だな・・さすが新任)」

またも溜息をついて、どうせなら窓際座ってやろうと思い立ち、愁と早々に離れて窓際に向かって歩くとポツンと人気のない窓際の一番後ろの席に誰か座っているのに気付く。
誰だろうと思ったがすぐにピンと来た。

「(嘘だろ、八神瑞稀・・!!)」

窓の外に見える桜の木を見ているのか優しい表情をしている、気になっている少女。
ランドセルを隣の席に置いて彼女の様子を眺めていると、少女は何を思ったのかプッと小さく笑った。
その、あどけない笑顔に拓斗は心拍数が上がった。ついでに、顔も赤くなる。
急に起こった自分の変化に戸惑っていると、そろそろ拓斗の視線に気付いた瑞稀は振り返った。
思わず、拓斗は動けなくなる。
先程のように嫌そうな目をされるのだろうかと。内心怯えた。
しかし、その少女は零した笑顔を見られたと思っている恥ずかしさからかバツの悪そうな表情をして言葉に詰まりながらも、「何?」と聞いてきた。
白い目で見られなかったことに安心した拓斗は、はやる胸を抑えながら「楽しそうだったから」と答えた。
実際、窓の外を見ている時に少女は楽しそうだった。
その答えに戸惑った少女は思い出したように「誰?」と聞いてきた。

「(やっぱ・・覚えてるわけないか・・)」

話したこともないし、当たり前かと割り切っていながらも残念に思っている自分にまたも驚きながら自己紹介をして、さりげなく名前を言ってみる。
少女・・瑞稀は驚いたが、拓斗が名前を知っている理由を聞かされると納得した。
若干、呆れられた部分もあったが。
拓斗の好きな、ゲームの話になったときは物凄い反応を見せられた。
と、同時に輝かんばかりの笑顔。
そんな笑顔に見惚れた拓斗は、からかわれたのと同時に顔を赤くさせてそっぽを向いた。

「(・・そっか。俺・・こいつのこと、気になってたのか。)」

担任となる先生が入ってきて、始業式の説明を聞き流しながらふっと考える。
チラッと横を見ると、先生の話を真面目に聞いている瑞稀の横顔。
それを見た拓斗は再び顔を赤くしながらも、ずっと気になっていた理由に気付いた。

「(・・俺、こいつのこと・・一目惚れしてたんだ・・)」


なんとまあ、恥ずかしい理由だがそう納得すると心にスゥっと溶け込んでいくのが分かった。
これが、拓斗の初恋。





*****


「・・・・・」
「だから、第一印象は気になる奴。第二印象は、一目惚れした奴」

拓斗が話している途中で、体制を変えたのは失敗だったと後悔した瑞稀。
顔を見て話が聞きたいと思った瑞稀は、拓斗の胡座座りをした筋肉づいている太ももに横向きで座って拓斗の胸に寄りかかっている。
拓斗の腕に包まれているのは変わらない。
とりあえず、瑞稀は恥ずかしくて顔を上げられなかった。
話題を振ったのは自分だが、まさかこんな話になると思っていなかった。
まさか拓斗が自分への思いを気付いた時の話になるとは・・。
しかも、自分との出逢いの話でもある。

「・・瑞稀?」
「・・・っ・・」

何も反応が返って来ない瑞稀に、拓斗は疑問を感じて声をかけた。
それでも、瑞稀は自分の世界に入ったまま。

「(・・・・一目惚れ・・何で拓斗はこんな恥ずかしいことサラッと・・!!)」

顔を真っ赤にさせていると、拓斗の指が瑞稀の顎を持ち上げた。
急に変わった視界に驚いているその目の前に、拓斗の少し拗ねたような顔があった。

「今日、無視二回目」
「だ、だって、拓斗が、恥ずかしいこと言ったから・・!!」

頬に移動した手の温もりにドキドキして思わず目を逸らしたくなったが、それも近づいてくる拓斗の顔によって叶わなくなる。


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