『秘館物語』第2話「訪問者」-26
「おねがいします……もっと……もっと、ください……!」
普段は物腰の優しい奥手の双海であるが、性に対する関心が並大抵のものではないことを兵太は良く知っている。なにしろ、それを生業にしているのだから尚更であろう。
(ぐっ……本気で、やばいんやけど……)
しかし、男としての矜持は保たなくてはならぬ。
「よーし、よし……気持ち良く、させたるからな……!」
兵太は、限界の近い己を省みることをやめ、腰の動きを強めることにした。
ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅっ!
「ああぁあぁぁぁぁっ!!」
双海が出したものとは思えない、それは“咆哮”であった。
(双海……今日はえらい、すごいで……)
彼女の興奮状態も、尋常ではない所まで高まっているに違いない。
(外に誰かおったら、聞こえてまうかも……)
それほどまでに、彼女の自制は利いていないのだから。
「兵太さん……いやっ……もっと、してくれないと、いやっ……!」
何かあるとは動きが緩む兵太に、猛然とラッシュを仕掛けてくる双海。
(難しいことはええ。もう、ワイも暴れたるわ!)
連れ合いが積極的な姿勢を見せているのだ。小難しい考えはかなぐり捨てて、兵太は己自身の野性に従って、その腰を強くリズミカルに突き上げることに専念した。
「あっ、あっ、んんっ、んあっ、んぅっ、あっ、ああぁあぁぁっ!」
声の高さを一段挙げて、リズムに合わせて双海が喘ぐ。その歌声を絶やさず響かせるために、兵太は腰の動きにひとひねり加えつつ、天に向かって突き上げた。
「ひあっ!」
「おっ、ここか? ここ、突かれるのがええんかっ?」
ぐちゅっ!
「ひぅっ!」
突き上げる位置を変える度に、声の質が変わる。
くちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅるっ、ぬにゅるっ、ぬにゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ…
「あっ、ひあっ、んふぁっ、あっ、ひっ、んんっ、ひぅっ、あっ、あぁっ!」
「ええで、双海。ええ声で、もっと鳴いてくれや…」
「ああぁあぁぁぁぁっ!」
それを見つけた兵太は、膣内の様々な部位を貫きながら、双海が紡ぐ歌声に聞惚れていた。
「はぁっ、はぁっ、あっ、あぅっ、んっ、んぅっ!」
その双海の歌声と息遣いが、細かなリズムに変化してきた。
ぶるっ、ぶるぶるっ…
と、時折、その小さな肩が震える。
「う、おっ……!」
それは胎内でも同様であり、その微細な振動が中で張りつめている兵太のイチモツにも大きな影響を与えた。
「あ、ああぁ、あっ、あっ……!」
双海は自分の体を制御できていない様子である。細やかだった震えはいつしか大きなものになり、その度に兵太の化身を何度も締め付けてきた。
「ぐっ…」
それは恣意的な動きではない。身体の反応に任せた不規則な収縮であり、それ故にこそ、兵太の分身はその予測不能に襲い掛かる愉悦に、翻弄されかかった。
「双海、もう、イキそうなんか?」
彼女の様子を見れば、限界を迎えつつあることがはっきりとしていた。だが兵太は、あえてその耳元に口を寄せ、状況を問い詰めた。
「もう、あかんか?」
わざと腰の動きを緩めて…。そこには、二発目の正射を少しでも先延ばしにしようという意図もある。
「………」
ぶるぶる、と肩を震わせる双海は身体でそれを示したようなものである。しかし、それでは兵太は許さなかった。
「どうなんや? ん?」
耳に吐息を吹きかけながら、問う。
「!」
その攻撃を受けた双海は、辛抱たまらず、という具合に背中を大きく反らした。