『秘館物語』第2話「訪問者」-25
「………」
やがて、それは収まりを迎えた。それが、濃厚かつ大量なものだったことは、交わっている部分の隙間から止め処なく溢れてくる白濁が示し表している。
(先に……いってしもうた……)
双海は、おそらく絶頂にまでは至っていない。決まって起こる微細な全身の痙攣が、今はなかった。
(しかも、やで……)
今回は、双海の胎内に入ってから放出するまでかなり早かった。ひょっとすると、記録かもしれなかった。それほどまでに昂奮していたのだとすれば、契機になったものはひとつしかない。
目の前で見た、双海の放尿する姿…。初めて目の当たりにしたその行為に、大きな刺激を受けていたことは全くもって否定することができなかった。
(これが、ワイのカオスか…)
志郎が好んで使う、人の内面を表す言葉を己の中に兵太は見出していた。
「兵太、さん……?」
胎内に種を撒いてから、急に黙り込んでしまった相手の様子を窺う双海。
「あ、あぁ……すまんな、双海」
「……?」
「さっさと一人だけ、いってしもうて…」
「ううん、いいの…」
ふるふる、と首を振る双海。
「あなたが、気持ち良くなってくれたなら……とても、うれしいから……」
相変わらず、たまらんことを言うものである。
どくん…
と、その言葉だけで、兵太の分身は放出によってわずかに萎えた芯を、再び硬直化させていた。
「あっ……」
それが胎内に収まったままなので、固くなる様子はダイレクトに伝わってくる。
「今度は、双海の番やな」
「え……?」
兵太は、ひとつ息を吐くと、留めていた腰の上下を再開させた。
「ひぁっ……!」
ぐちゅぐちゅぐちゅ…
と、潤いを極める接合部が、淫靡な音を立てて鳴る。
「凄い音や……ぐちょぐちょいうとる……昂奮するわ……」
「やっ……あ、ああっ……!」
振り撒かれた濃厚かつ大量な精が、双海の膣壁から溢れる分泌液と混ざり合い、そうやって生み出された新たな潤滑液の奏でる淫猥な音が、二人の昂奮を改めて煽り立てた。
ぐちゅるっ、ぬちゅぬちゅっ、ぶちゅるるっ……!
「あっ、あぁっ、や、やぁっ……!」
往復する度に、中からぬるりと漏れ出てしまう。種が零れてしまうことを恐れる双海は、それを留めようと括約筋に力を込めるがどうにもならない。
「んくっ……!」
だが、締め付けることによって胎内の圧力が高まり、兵太の分身が起こす胎内の摩擦をより気持ちの良いものに変えていた。
「は、あっ……! んっ、んんっ……!」
いつしか、それを堪能するための手段として、双海は膣内の締め付けに強弱を加えるようになった。
「ふ、双海……た、たまらんでっ……!」
辛抱できず、という具合に兵太のほうが嬌声にも似た悲鳴を挙げていた。双海がその意志で起こす膣内の千変万化たる蠢き具合に、初弾を撃った直後の余裕がすっかり奪われていた。油断をすると、すぐにでも暴発してしまいそうである。
やむを得ず、腰の動きを緩める兵太。そうでもしなければ、早漏のレッテルを貼られてしまいかねない。
「いやっ……とめちゃ、いやですっ……!」
ところが、そんな兵太の消極的な動きに対して、双海がはっきりとした意思を見せた。言葉だけではなく、腰の動きを更に強めて、兵太の奮起を促してくる。