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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第10話-39


 試合の結果である。

  【双葉大】|000|000|204|6|
  【仁仙大】|010|100|06X|8|


 8回の裏で、完全に試合は決したかに見えたが、9回の表に双葉大学は猛攻を見せて、2点差まで詰め寄った。
 8回表にクリーンアップを三者三振に仕留める好リリーフを見せた水野葵は、その回でマウンドを降り、9回には速球派の福原が登板した。ちなみに、安原誠治も一塁の守備から外れて、ベンチに戻っていた。代わりに、一塁に入ったのは、マウンドを降りた葵だった。
 その福原に、双葉大学の打線が猛然と襲い掛かった。6番・吉川の安打に始まり、7番・浦も内野安打で続いて、8番・結花が四球を選び、無死・満塁となったところで、9番・航に2点適時打が生まれた。その後、岡崎が四球を選んで再び満塁となったところで、2番・栄村はゴロを打ってしまったが、ゲッツー崩れの間に1点を加えた。一・三塁で打席が廻った雄太は、犠牲フライを放って、これで4点目を奪ったのだが、4番・桜子の痛烈な打球は三塁正面のライナーになり、残念ながら猛攻はそこで終わりとなった。
「ゲームセット!」
 双葉大学は、仁仙大学に破れ、戦績はこれで1勝1敗となった。だが、最終回の粘りは、次の試合に繋げる大きなイニングにもなった。
 一方、逃げ切りを図りながら追い上げを受けた仁仙大学は、結局のところ、反省の大いに残る試合結果になってしまった。
「………」
 試合の最後を締める礼のとき、大和はもう葵の姿は追いかけなかった。彼女が自分に向ける冷笑は、黙って受け止める覚悟を決めた。たとえそれで、詰られ罵られようとも、今日のように、桜子や自分のチームメイトを裏切ってしまうことの方が、大和には耐え難く痛いものだと思えるようになっていた。
「すいませんでした!!」
 ベンチに戻るなり、開口一番、大和はそう言って深々と頭を下げていた。今日の試合について、完全な独り相撲に陥っていたことを、詫びたかったのだ。
「なあに。“完全試合”の厄落としと、そう考えようぜ」
「そうだな。8回のピッチングは、確かに褒められないが、あそこで立ち直ったんだ」
「センパイ、次の試合でがんばりましょう」
「そうです。次の試合をかんがえましょう」
 大和を責める声はない。
「ONE FOR ALL,ALL FOR ONE. ヤマト、これをキモにめいじるのですよ」
「Sir、監督!」
 エレナの訓示を、素直に受け止める大和。その姿は、何処か吹っ切れたようにも見えた。雄太が言う、“完全試合”の厄落とし、の効果と言えるのかもしれない。落とした厄は、全く別のものだったが…。
「今日はやぶれはしましたが、ラストイニングのAttackは、熱いSpiritsを感じました。NEXT GAMEに、きっと生きることでしょう!」
「「「Sir!」」」
「うつむかず、胸を張り、そして、前を向くのです!」
「「「Yes,sir!!」」」
 ベンチの中で轟く気合の掛け声。敗れたチームとは思えないほど意気軒昂に、双葉大学は球場を後にしていった。



「完全には、潰せなかったようですね」
 一方、追い上げを喰った仁仙大学のベンチは、重苦しいムードがあった。これで2戦2勝となったはずだが、勝ったという雰囲気がまるで感じられない。
「本当に。…ゴキブリのように、しぶとい連中です」
 葵が、グラウンドを挟んだ向こう側で起こる気合の篭もった喧騒に、冷ややかな視線を送っている。そして、“ゴキブリ”とは、また苛烈に言ったものである。誠治としては、苦笑せざるを得なかった。
「………」
 その視線に宿る思いが、何を意味しているのか、薄らと理解している誠治はしかし、何も言わずに葵を促すと、二人揃ってベンチから奥に下がって、そのまま球場を後にした。
 向かう先は、他のチームメイトたちとは違って、かかりつけの“病院”であることは、皆にも伝えていたことだった。



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