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溺れる爪痕
【ファンタジー 官能小説】

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接触-1

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ゴッと空間を飛散した水滴が舞う。

踏み締めた革靴がジリ・・・と鳴り、暗く深い瞳に底のない闇を孕む。

陣風はその男から放たれ、周囲へ圧倒的な威をもたらしていた。

「待って、アズール。この子たちを怒らないであげて」

背後に気配もなく現れた銀髪の男は風を切り、へらりと笑い歩を進めると立ち竦む少年と少女の前にはだかった。

ノアには及ばずとも、リリスやカガリを圧するくらいの力はアズールにもある。

「ノア、お前が躾られないのなら、俺がしてあげるよ。目玉一つ潰れるくらい、安いものだろう?」

「学術に身を投じて争いを嫌う優しい君が、そんなこと出来るのかい?」

「勘違いするな。脅しじゃない」

「ごめん、俺が悪かったよ。やり過ぎたね、この詫びは必ず。その子の目が覚めたらひざまずいて謝ってもいい」

「・・・・!ノア様っ!」

「黙って。カガリ、リリス、ご苦労様。戻りなさい」

「でも、・・・」

「お前も随分可愛がっているみたいじゃないか」

抱き上げたシウの身体をローブの中に包み、アズールはノアを一蹴する。

カガリとリリスに悪意や罪の意識はない。

しかし敬愛する上官が謝罪を申し出ては焦らずにはいられなかった。

「君たちには、どうして俺が今、この子を抱いているか分からないんだろうね」

アズールの言い放った台詞にノアは肩を竦め、カガリはただただ驚き、リリスは嫌悪を露に顔を歪める。

魔術師の証であるローブに触れること、ましてや一般人でもなく奴隷以下のシウがその中に包まれているなど、リリスたちには目を疑うほどの事象なのである。それは甚だしくこの世の道理から外れたことなのだ。

「理解を求めても無駄だろうね。ノア、覚えておけ。二度目はない」

踵を返し翻った黒のローブに銀の濡れた髪が揺れ、同じ色のノアの髪が靡く。

「了解。先生」

嘲るような口調を無言で受け流し、アズールはシウの匂いで充満する浴場を後にした。


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