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溺れる爪痕
【ファンタジー 官能小説】

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接触-2

 気を失ったまま時折譫言のように唇を震わせるシウをベッドに横たえ、アズールは涙で赤く腫れた目尻に指を這わせる。

それだけでビクリと身動ぎ無意識にも拒否の色を醸し出す彼女。アズールが彼女の受けた仕打ちの程度を察するには充分だった。

「・・・ん、・・・・ゃ・・・」

「大丈夫。俺はここにいるよ」

「あ、・・・、・・」

微かに動く唇が何かを象り、また一筋、熱い涙が目尻がら零れ落ちる。

ベッドの端に腰を下ろしたアズールはシウの頭を撫で徐に目を細めた。

拘束の最中で自分で付けたのだろう足首の爪痕は血が滲み、深い引っ掻き傷を幾つも刻んでいる。

アズールはシウの小さな身体に覆い被さるようにしてそれを手に取り、そっと口付けた。

傷口からリンパ腺をなぞる唇は掠めるくらいの距離を保ち、ゆっくりゆっくりと上がっていく。

熱を持つ部分に鼻先が近付けばシウの喉からくぐもった吐息が吐き出された。

アズールの舌の上に甘い鉄の味が広がり、淫靡な彼女の毒が鼓動に作用していくのが分かる。

手首にも軽いキスを落とし、逸る鼓動を抑えたアズールは吐き出される呼吸を絡めとるように、淡く色付いた唇に自分のそれを静かに合わせた。

カガリに穢された口内へ舌を差し入れ丁寧に歯列をなぞり、引っ込んだシウの舌を吸い上げる。

「・・・・っ、ん、・・・ぅ」

シウが苦しげに眉を潜め呻いた頃には、痛みどころか身体に蓄積されていた疲労までがアズールによって絡め取られた後。

どちらともつかない唾液に濡れた唇を舐め、手の甲で拭ったアズールは寝息を立て出したシウを見つめその身を引く。

シウの部屋を出たアズールは隣接する自室に戻ることもなく、研究所の地下へと姿を消した。


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