『SWING UP!!』第9話-34
「それではみなさん、今日はおつかれさまでした。SEE YOU!」
練習試合が終わり、総括とクールダウンを済ませてから、本日は終了と相成った。
それぞれが家路に着く中、結花と航もまた、それが当然のように、並び立って歩いていた。
「今日の成績です」
「うん」
「わたしは、4打数1安打1打点。アンタが、5打数2安打2打点。うーん…」
「片瀬の働きは、抜群だったな」
「え?」
数字だけ見れば、航の方に分があるようにも思えたが、彼はそう見ていないようだった。
「俺のヒットは二本とも、片瀬に打たせてもらったようなもんだ」
「そう、なの?」
「いつも、あれだけ粘ってくれたんだ。俺に対する投球は、焦った感じがしてたよ。片瀬が、そう仕向けたんだって、誰にだってわかるさ」
「………」
きちんと彼は、自分の頑張りを見ていてくれた。我知らず、頬に熱いものを感じる結花であった。
(…って、なに乙女ってんのよ、わたしは)
ぶんぶん、と頭を振って、自分らしさを取り戻そうとする。
「どうした?」
挙動に不振なものを感じたのだろう。怪訝な様子で航が注視してきた。
(あ……)
視線が絡まった。穏やかな表情で、微かな笑みを浮かべて、航が自分を見つめている。
(あ、うぁ……)
頬がますます熱くなる。胸の動悸が、蒸気機関をフルに稼動させたかのように、早くなっていくのを止められない。
自分では否定するだろうが、結花は間違いなく“乙女モード”に入っていた。
「片瀬、顔が赤いぞ?」
興奮しすぎて、熱でも出たのか? と、航が手を伸ばして、額にそれを当ててきた。なんというベタ…青春のあふれる光景であろうか。
じわ…
「!?」
火照りが全身を駆け巡り、それが内股の間に集まって、熱い湿りを生み出してしまった。
(う、うそ……わたし、おでこ、触られただけで……)
秘処を濡らしてしまったのだ。こんな体の反応は、今までになかったことで、結花の混乱は最高潮に達した。
「や、や、やめな、さいよ……た、たとえ、お、おでことはいえ、乙女の、はだに、さ、さわるのは……」
セクハラよ、と続けて言おうとしたが、言葉にならなかった。
「すまん。確かに、無神経だったな」
手が、額から離れていった。一瞬、結花は残念そうな顔をしたが、それは本人も気がついていない。
(うぅ……アソコが、変……)
しかし、おでこを触られたときに発生した股間の湿り気は、間違いなくショーツに浸み込んで、歩く度にヌルヌルとした独特の感触を、結花に与えてきた。それが微細な刺激となって、妙な気分にさせるのだ。
(やばい……)
エアロバイクのサドル、木製のマッサージ棒。それらに股間を擦り付けて“自慰(オナニー)”をしている自分の姿が、鮮明に蘇る。そのイメージがさらに、秘花の潤いを生んでしまい、ショーツの内側のベタつきはいや増す一方であった。
(触りたい……オナニーしたい……)
身体がそう、叫んでいる。もちろん、天下の往来でそんなことはできないので、我慢するしかないのだが、信号待ちなどで足が止まったとき、抱えているバッグを体の正面に持ってきて、縁の固い部分を太股に充て、腰をもぞもぞさせる動きを、知らず結花はしてしまっていた。