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狐もふもふ
【ラブコメ 官能小説】

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出会い〜そして〜-1

 あれはいつの頃だろう――僕が小さな時の出来事だったのは覚えている。
 町の神社の裏にある森で虫を捕まえようとしていた時だったかな。僕がソレに出会ったのは。
 あの頃の僕と同じくらいの大きさの狐。何があったのかは分からないけど、怪我をした
狐に出会ったんだ。
『えっと……だいじょうぶ?』
 人の言葉なんて分かるはずがないのに、僕は怪我をしている狐に話かけていた。
 勿論、狐からは返事があるはずもなく……
『ケガ……してるんだよね?』
 それでも僕は必死に狐に話かけていて――虫を捕まえることなんかすでに忘れていて、
気がつくとその狐の手当てをしていた。
『――だいじょうぶ? ごめんね、ぼくじゃきちんとなおせなくて』
 勿論、子供だった僕に怪我をしている狐をまともに手当てすることなんか出来なくて、
ただ単に持っていたハンカチを怪我しているところに巻いて、そこを優しく撫でてあげる
ことしか出来なかった。
 誰か大人に見せればいい。今ならきっとそんな判断を下すのだろうけど、残念ながらあ
の時の僕にはそんな発想はなくて。
『いたいのいたいの、とんでけー』
 なんて、子供特有のおまじない的言葉をかけていた。
 そんな僕の手当てやおまじないが効いたのか、狐自身が空気を読んでくれたのか、一つ
声をあげ僕のもとから元気そうに立ち去っていった。
 あの時の僕は凄く満足そうな顔をしていただろう。実際には何も出来ていなかったのに、
それでも誇らしげに満足気に。

 そんな幼少期の頃の狐との出会いから、もう何年経っただろうか? 今また僕の前に狐
が居る。しかもあの時とは違って人の形をした自称、狐が。
「はぁ……これは夢かなにかなのかな?」
 夢なら早々に覚めて欲しいところだ。家の中に見知らぬ人が居る。しかも自称狐の彼女
の頭とお尻には狐の耳と尻尾がついている。
「夢なわけがなかろうて。これはちゃんとした現実じゃ」
「頭とお尻に狐の耳と尻尾が生えている人が目の前に居て現実って言われても説得力にかけるんだけど」
 仮に現実だとしても、彼女の姿は狐の仮装ということになるわけなんだけど……
「私は本物の狐じゃ」
 なんて言うくらいだから、仮装の類じゃないんだよね。でも、それなら人の形をした狐
って変身とかしてなったのかな? よく昔話で狐とか狸が人の姿や物に変身したりするけ
ど、彼女もそういう感じなのかな?
 まぁ、そんな僕の思案は置いておいて話を戻そう――
「えっと、あなたは何で僕の家に居るのですか?」
 彼女を家に呼んだつもりはないし、なにより家には鍵をかけていたから入ることなんて
出来ないはずなんだけど、どうやって家に侵入してきたのだろう。
「私に出来ぬことなぞないわ」
「その答えは正直どうかと思うよ」
 答えになってないし、それならば魔法でも使いましたとか言ってくれた方がまだマシだよ。
「私達狐は稲荷神の神使じゃぞ。神使である私が人の家の中に入るなぞ造作もないことじゃ」
「へ、へぇ……それでその神使のあなたは、どうして僕の家に? まさか僕に用事がある
わけでもないでしょうに」
 僕と狐との関係といえば、幼少期に怪我をしている狐を助けたくらいで他には何も……
それに僕はこの人のことは知らないし、本当に何の用なのだろうか?
「用もない人間の家に入るわけがないじゃろ。私はお主に用があるから来たのじゃ」
「ほ、ほんとに僕に用が!?」
 一体何を? まさか神様への生贄になってもらうとかそんなのじゃ――
「お主は何やらアホなことを考えているようじゃな。一応言っておくが、私の用事はお主
が考えているようなことではないからの」
「そ、そうなんですか……?」
「あたりまえじゃ」
 よ、よかった。生贄とかにされなくて本当によかった。
「まったく、暫く見ない内にバカになったのではなかろうな。いや、今はそんなことはいい。
それよりもお主はこれを覚えておるかの?」
 そう言って彼女は僕の目の前に汚れたハンカチを出した。
「……ん? これって――僕のハンカチじゃ……」
 いや、間違いなく僕のハンカチだよ。だって僕の名前がひらがなで書かれているし、て
か何で彼女が僕の昔のハンカチを持っているんだ?
「そうじゃ。これはお前さんのハンカチじゃ。何で私がこのハンカチを持っておるか分かるかの?」
「何でって、拾ったとかそんなんじゃ……」
 でも子供の時にハンカチを無くしたことはないし。唯一無くなったのは、あの怪我をし
た狐の手当てに使った物だけだ。
「普通、これを見れば察しがつくはずなのじゃが、お主はとことん察しが悪いようじゃの」
「そこまで言わなくてもいいじゃないか。僕だって自分がバカなことくらいは自覚しているよ」
「別にそういうことを言っているわけではないのじゃがな。まぁよい。本当ならばお主が
先に気づいてくれる展開を望んでいたのじゃが、贅沢は言ってられんか」


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