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狐もふもふ
【ラブコメ 官能小説】

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出会い〜そして〜-12

 何分、何十分とそんなことをうわ言のように唱えながら眠りにつく。あぁ、僕はコンさ
んに手を出さずに紳士的に眠りにつくことが出来るんだ…………
「……なんじゃつまらん。手を出すのなら、出せばいいのに……」
 意識が落ちる寸前に何か小さな呟きが聞こえたような気がしたけど、我慢できたことに
よる達成感が邪魔をして深く考えることはしなかった。

「んぁ……」
 朝の日差しが差し込んできて目が覚める。ふと、横を見るとそこには誰もいなくて、も
しかしたら昨日の出来事は全部夢だったではないだろうかと思ってしまうほどで――だけ
ど、そんな考えも台所から聞こえてくる音によってかき消される。
「やっぱりあれは夢じゃなかったんだ……」
 子供の頃に出会った狐。その狐が人の姿になって僕の前に現れた。そして彼女はあの時
のお礼がしたいと言って、家に転がり込んできた。
「未だに不思議な気分だけど……」
 なんていうか、目が覚めると台所から料理を作っている音が聞こえるっていうのは、な
んだか安心出来るね。
 久しぶりに聞く音。一人暮らしをする前は当たり前のように聞こえていた音も、一人に
なってからは聞くことはなかったから。
「む……起こしてしまったかの?」
 台所から顔を出し、こちらを窺うコンさん。
「いえ、そんなことはないですよ。それよりも朝ごはん、作ってくれているんですね」
「世話を焼くと言っておったじゃろ。朝食を作るのも世話を焼くうちの一つじゃ」
 身に着けたエプロンを翻し、そう答えるコンさん。
 こんな風に誰かに世話を焼かれるっていうのは、恥ずかしい反面なんだか嬉しくも思う。
 きっとこんな風に思えるのは、昨日全力で煩悩を抑えつけたからだろう。もし理性が完
全に崩壊してコンさんを襲っていたら、こんな気持ちで朝を迎えることは出来なかっただ
ろうし、コンさんの顔を見ることも出来なかっただろう。
「もうすぐ終わるから、お前さんは顔でも洗ってくるといい」
「分かりました」
 寝ぼけ眼のまま洗面台にいき顔を洗う。冷たい水がとても心地いい。これならすぐに目
も覚めそうだ。
「お……戻ってきたな。雑用を押し付けて悪いのじゃが、テーブルに皿を並べてくれぬか?」
「あ、はい。いいですよ」
 お皿を並べるくらいは僕にでも出来るからね。
「じゃ、盛り付けといくかの」
 昨日の夕食とは違って見た目の派手さはないが、彩り鮮やかな料理が並べられていく。
勿論、油揚げを使った料理も多く見られる。
「寝起きじゃからの。サッパリとした料理を用意してみたのじゃが……」
 相手のことをきちんと考えられて作られた料理の数々……まぁ、油揚げに関しては絶対
に僕のためではなくて、コンさん自身のためだろうけど。
「美味しそうですね。食べていいですか?」
「ああ、食べていいぞ。じっくりと味わって食べるがよい」
「はい。では、いただきます」
「いただきます」
 両手を合わせ、いただきますの言葉を並べる。さて、どれから食べようかな?
「うむ。相変わらずいい出来じゃな」
「……そうですね。昨日のも美味しかったですけど、今回のも美味しいですね」
 昨日の時点でコンさんの料理の腕は理解してたけど、改めて食べてみてやっぱり凄い。
「神使以前に、料理は女として出来て当然じゃからの……」
「そういうものですかね?」
「当たり前じゃろ」
 でも今は、コンビニやスーパー。果ては低価格の食べ物屋さんまである現在では料理は
別に必須スキルというわけでもない気がする。
 そんな僕自身もコンビニの弁当に頼りっぱなしだったし。
「料理の出来る女は自然と幸せになれるからの」
「そうなんですか?」
「ああ。幸せは食に始まり食に終わると言うくらいじゃからな」
「へぇー」
「それに美味しい物を食べるとなんだか嬉しい気持ちにならんか?」
「あ、それは分かります」
 味気ない物を食べるより、美味しい物を食べた方が楽しい気分になれるからね。
「じゃから私は朝食でも真剣に作るのじゃ」
「そうだったんですか……」
 気のせいかもしれないけど、コンさんが言うと妙に説得力がある。これもコンさんが神
使だからなのだろうか?
「話はこれくらいにして、たくさん料理を食べるのじゃ」
「はい」
 ――とは、言ったものの軽い雑談を交えながらご飯を食べていく。マナー的には食事中
に喋るのはよくないのかもしれない。でも、ただ無言でご飯を食べていくよりは、何かく
だらないことでもいいから話ながらご飯を食べる方がいい。
 作業的にご飯を食べるというのは嫌だから。
「ふぅ……ご馳走様でした」
 多少の時間をかけ朝食を食べ終わる。こんなにもお腹いっぱいに朝食を食べたのはいつ以来だろうか?
 少なくとも、ここ最近ではなかったことだ。
「朝食も食べ終わったし、食器でも洗うとするかの」


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