幸福連鎖反応-2
今夜はさすがに狼化できず、諜報員の活動はお休みだ。
ルーディはいつもよりだいぶ早い時間に、ベッドに入った。
正確には、安静にしていろと、ラヴィに叩き込まれた。
今では、二階の小部屋に大き目のベッドを置いて、一緒に眠っている。
布団に入ったが眠れず、横たわったままぼんやり窓の外をながめる。
綺麗な細い新月の晩だった。これくらいなら鎮静剤を飲まなくても発作は起きない。
(初めてラヴィに会った日も、こんな月だったなぁ……)
差し込む月光も弱弱しく部屋は暗いが、人狼は闇夜でもよく眼が見える。
静かにドアが開いて、ラヴィが手探りで入ってきた。
灯りをつけないのは、ルーディがもう眠っていると思ってのことだろう。
「起きてたの」
闇で金色に光るルーディの双眼を見て、ラヴィが微笑む。
「うん」
上体を起こして座り、ベッドにたどり着いたラヴィを左手で抱き寄せ、口づけた。
髪にまだ少し湿気が残り、石鹸の良い匂いと、それ以上に甘いラヴィの香りがふわりと香る。
簡単にほどけた唇から舌を差し込み、口内を嬲って甘い唾液をすする。
「んっ……だめ……怪我して……」
ラヴィが両手で突っぱねようとしたが、片手でもルーディの方がはるかに力強い。引き寄せたまま首筋に軽く歯をたてる。
「眠れないし、こんな怪我くらい、もう……」
ピタリと言葉が止った。
タチの悪い狼は口元を緩めて囁きかける。
「すごく不便な事があった」
「え?」
「ラヴィを脱がせるの、手伝って」
「……え?え!?」
暗闇の中、ラヴィの頬が見る見るうちに赤く染まる。
「すごくラヴィを抱きたいけど、うまく出来ない。ダメ?」
「……ん」
意を決したように、ラヴィは頷いた。華奢な手がゆっくり夜着のボタンを外していく。
(うわ……なんかこれ、エロい)
もう回数など覚えていないほど抱いているけど、ラヴィを前にするといつも余裕がなくなり、夢中で脱がせ貪ってしまう。
ラヴィを脱がせるのは大好きだが、羞恥に目を伏せ恥じらいつつ肌を晒していくラヴィは、想像以上に艶めいていた。
シーツにペタンと座り込んだまま、前ボタンを全て外し、一瞬息を飲んで、肩から夜着を落とす。
残っているのは、陰部を覆う小さなショーツだけで、両腕を小ぶりの胸の前で交差し、戸惑った表情で視線を逸らしている。