彼1-6
「良いよ! 分かった! じゃあ、私が勝ったらキミの部屋に行く!」
少し、見つめ合いました。
私もそうだけれど、彼も同じ思いだったと思う。
「Hしよ!」
言葉にはしなかったけれど、絶対に同じ気持ちでした。
「あっち向けホイ!」
三回勝負にして、レジの前でやってました。店員が呆れているのも楽しかった(笑)。
結果は三勝二敗で私の勝ちでした。
私が支払いを済ませました。
「キミのうちどこ?」
店を出て聞きました。
「すぐそこです。」
「?!」
彼、私のマンションの方に近づいて行きます。
「ここです。」
「?!」
私の住んでいるマンションでした。
「ここ?!」
「そうです。あなたもここですよね(笑)。」
三度、「?!」。
案内されたのは二階の角部屋。
私の部屋は三階の真ん中。
「俺、実はあなたがここに住んでるの知ってたんス。何度も見かけてました。」
私はちっとも知りませんでした。
「あなたの事を見かける度に『派手なネーちゃんやな!』って思ってたんス。」だって!
「なんで黙ってたの?!」
「だって、そんな事言ったらキモイでしょ。誤解されるのも嫌だし。」
ま、確かにそうだと思った。同じマンションに住んでるって知ってる人にナンパされたら、確かにキモイ。
間取りは全く私の部屋と一緒でした。 1LDK。彼の部屋は角部屋だから、私の部屋より窓が多いだけ。
部屋は綺麗でした。結構高級っぽいソファがリビングにありました。
私はてっきり、ボロアパートで万年床で六畳一間で、共同キッチンで共同トイレで・・・みたいなレトロな感じだと思っていたので凄く意外でした。
でも「貧乏学生」が住むのはそんなところでしょ?!
思い込みは怖いね(笑)。
「男の一人暮らしのわりに綺麗にしてるね。さては、彼女がいつも掃除してくれる?」
探りを入れました(笑)。
「今は彼女居ません。居たら、あなたを入れたりしないでしょ。」
その通りです。
「あなたの方こそ、今頃彼氏が部屋で待ってるんじゃないですか?」
「残念ながらそんな事はありません!」
「え、彼氏居ないんですか?」
「居るような、居ないような・・・。」
「そうか・・・。」
「何よ、そうかって!」
「いや、あまり聞いちゃ行けないかと思って・・・。」
リビングで、なんとなく突っ立ってたら、「座ってください」って彼が言って。テレビをつけないで、CDをかけました。私、音楽には全く興味がないので、ヒット曲しか知りません。その時の、彼がかけたCDが誰かなんて分かりませんでした。
「誰?」
「『エゴラッピン』。
知らない? 俺の一押し!」
「へ〜。」ボーカルの高い声が気持ち良いと思いました。
「何か飲む? たいしたものないけど。」
「何でも良い。気使わなくて良いよ。」
「アルコール? ソフトドリンク?」
「ソフトドリンク」
「じゃ、『午後ティー』しか無い。」
「それで良い。」
「サクランボ好き?!」
私、果物は何でも好きだれど、サクランボと桃が大好きです。