恋に変わるとき-11
あの頃のあたし達は、お互いの印象が最悪で、今こんなに好きでいっぱいになるなんて夢にも思わなかった。
コイツに対する気持ちが恋に変わった今、あの頃の喧嘩してばかりの日々がやけに昔のことのように感じる。
何だかあの頃の自分がやけにくすぐったく感じて、あたしは目を細めた。
「でも、お前が彼氏とのことで相談してきた時にさ、アレ見られるのが怖いだなんてくだらねえことで悩んでるの横で見ててさ、不覚にも可愛いとか思っちゃったわけね。
そしてしおらしくお礼も言うもんだから、すっかり調子狂わされたんだ。うん、今思えばそっからやけに気になってたのかもな」
「…………」
「だからお前が彼氏に浮気されてたって俺に泣きついて来たとき、気持ちが暴走しちゃったんだよな。
お前が拒まなければ最後までヤるつもりだったんだ。偉そうに説教しときながら、俺ズルいだろ……でも」
「でも……?」
「好きだから抱きてえ気持ちは、ホントだから」
仰向けのまま、こちらを見た彼の瞳はまっすぐで、真剣で、そのまま射抜かれてしまうほど。
いや、すでに射抜かれてしまったのだ。
だからあたしはまっすぐコイツを見ることができずに、まるで叱られてるみたいに正座して、脚の間に手を挟んで縮こまるだけ。
何か言わないと……とモジモジしていると、
「メグ」
とあたしを呼ぶ声が聞こえてきた。
苗字じゃなく名前を呼んでくれたことがやけに照れ臭い。
返事もしないで顔だけを上げると、彼は両手を広げていた。
「おいで」
「……え」
「いいから。メグおいで」
恐る恐る近付いていくと、手首を捕まれあっという間に彼の胸の中に身体を引き寄せられていく。
彼の身体の上に乗っかる形で抱きすくめられたあたしは
行き場のない両手を彼の胸の上でグッと握り締めるだけだった。