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恋に変わるとき
【青春 恋愛小説】

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恋に変わるとき-10

“蜘蛛の巣女”“ゴリラ女”。コイツが悪態を吐く度にあたしはバイオレンスな反撃を繰り返してきた。


今だってコイツはあたしをバカ女呼ばわりしてるから反撃して然るべきなのに。


何でだろう、ベッドに座り込んだまま一歩も動けない。


それどころか心臓がどんどん速く動き始めて、血流がよくなった身体から汗が吹き出てくる。


バカ女呼ばわりされてもちっともムカつかないのは、コイツがあたしのこと……?


「あー、マジだせえ、俺」


ろくに吸わなかった煙草を灰皿に押し当てて火を消すと、臼井陽介は再びこちらに歩いてきて、あたしの目の前に座った。


そして、あたしの頭を軽く撫でる。


「スマートにお前を抱いて、それが済んだらサラッと自分の気持ち伝えるつもりだったのに」


「え?」


「……俺、お前が好きなんだ」


そう言って、奴はそのまま後ろに倒れ込んで仰向けになる。


ジッと天井を仰ぐ臼井陽介の遠くを見つめるような眼差しを見てからあたしは大声を出した。


「えええええ!!?」


一歩遅れてから耳をつんざくような驚きの声。


臼井陽介は耳に指を突っ込んでギュッと目を瞑った。


「デケえ声出すな、頭に響く」


「だっ、だって……今なんて……」


「好きって言った」


「う、嘘だ……」


「マジ」


一向に否定も、ふざけもしない彼の様子に顔がゆでダコのように赤く熱くなっていく。


すっかり何も言えなくなったあたしをチラリと見てから、奴はポツポツと語り始めた。


「最初はさ、単純に顔が好みだったんだ。だから、概論の講義の時にわざわざお前に声かけた」


初対面なのに、出席票を出しといてと頼んだ時の調子のいい笑顔が浮かぶ。


キャップをとったときに現れた顔に不覚にもドキッとさせられたっけ。


あの時の胸の高鳴りが蘇って、あたしの顔は自然と紅潮していく。


「でもいざ話してみれば、頭固えわ融通きかねえわで、絶対相性わりいなって思ったよ。

声かけても睨んでくるし、すぐ手が出るほど狂暴だし、可愛いけどコイツは無理だって思ってた」


ゆでダコのあたしをチラリと一瞥した臼井陽介は、口の端だけをキュッと上げてニヤリと笑った。







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