お嫁さんはどっち?-14
そして俺は俺で、二人の身体を使って擬似セックスのようなものをしてしまうし。
「これで、どちらか決めていないんだから、どうしようもないヘタレだよな」
性的なヘタレは半分くらい克服されているが、肝心なところは克服されていない。
「あまり二人を待たせるようなことはよくないんだけどな……」
それでも、これはとても重要なことだから。安易に答えを出したくはないんだ。
「二人同時にってのは、節操がなさすぎるよな」
それは二人にも失礼だよな。それに完全に甘えだな。
はぁ……考えることはたくさんあるけど、とりあえず今は――
「問題を全て先送りにして寝るか」
風呂場で変に体力を使ってしまったからな。何気に眠気がかなり来ている。
それに、こんな眠い状態で考え事をしても何一つ纏まらないだろう。
「これは逃げではない。戦略的睡眠なんだ」
そう。逃げでも、現実逃避でもないんだ。戦略的に必要な睡眠なんだ。
言い訳のように自分自身に言い聞かせながら眠りにつく。落ちる前に二人にお休みと言いながら。独り言のように呟きながら……
「……くん。起きてください」
ん? 何か声が聞こえる。誰かが俺に話しかけている。
「りっくん、起きてください朝ですよ。りっくん」
あ、朝……? もう朝になったのか? あまり寝た実感がないのだが。もう朝になってしまったというのか。
「りっくん。起きないと悪戯をしますよ?」
「ん、んぅ……」
まだ寝たいという意識を抑え込み、目を覚ます。
「やっと起きましたねりっくん。ですが、悪戯が出来なかったのは残念ですね……」
「……何をするつもりだったんだ?」
彩菜のことだから、変な悪戯ではないと思うが悪戯をされるのは、嬉しくはないな。
「ふふ……っ、内緒ですよ」
ニッコリと笑みを深くする彩菜。これ以上は危ない気がするので、敢えて聞かないでおこう。
「朝ご飯の準備が出来ていますから、一緒に食べましょう」
「ああ。そういえば彩花は?」
相変わらずまだ眠っているのだろうか? あいつは、俺よりも寝るからな。
「彩花なら、もう起きてますよ。早くりっくんを起こせって言ってました」
「珍しいな……」
彩花がすでに起きているのも珍しいし、起きているのにこの場に居ないのも珍しい。
「あの子にも色々あるんですよ♪」
「……どういう意味だ?」
「さぁ? それは後でのお楽しみですかね」
「果てしなく嫌な予感しかしない……」
彩花の考えることは、碌なことがないからな。それに彩菜も何か一枚噛んでいるみたいだし、益々嫌な感じがするよ。
「さぁりっくん、行きましょ」
「あ、あぁ……」
彩菜に腕を取られながらリビングへと移動する。
腕を絡められるのは、かなり恥ずかしいのだが、彩菜の嬉しそうな顔を見ると文句を言えなくなってしまうな。
「ふん、ふふ、ふ〜ん♪」
ご機嫌に鼻歌を歌いながら歩く彩菜。何がそこまで嬉しいのか、何を考えているのやらご飯を食べた後がちょっと怖いな。
「お、陸! 起きるのが遅いぞ!」
彩花が待ちわびたといった表情で俺と彩菜を迎え入れる。
「悪い。それにしても起きるのが早いな彩花」
「ふふん! いつまでも朝が弱いあたしじゃないんだぞ」
胸を張って威張る彩花。どうせ彩菜に起こしてもらっただろうに、威張りすぎだろ。
「まぁまぁ、まずは朝ご飯を食べましょう。せっかくのご飯が冷めてしまいます」
「ああ、そうだな。早く食べよう」
両手を合わせて、彩菜が作ってくれた料理に箸を伸ばす。
うん、相変わらず彩菜の作るご飯は美味しいな。
「たくさん食べて、たっぷりと精をつけてくださいね」
「あ、あぁ……?」
「絶倫になるくらい、精をつけるんだぞ!」
「おぉ?」
何だか話しの方向がおかしくなっている気がする。
ご飯を食べて元気になるのは分かるが、精をつけるというのはおかしくないか。
いや、意味合いとしては間違ってないかもしれないが、この二人が精という言葉を使うと、何か嫌な感じがするんだ。
そう、この後大変なことが起こるような……予感ではなく確定した未来としてのことが。
「まさかとは思うが二人とも……」
「ふふっ♪ たくさん、たくさん精力を蓄えてくださいね♪」
「溢れ出るくらいの精力をつけるんだぞ」
「oh……」
どうやら間違いがないようだ。
この二人、ヤバイことを考えてやがる。俺の予想が間違いでないのなら、エロイベントがあるような……
「さて、りっくんもたくさんご飯を食べてくれたし、そろそろ……」
彩菜が俺をニヤリと見やる。完全に何かを企んでいる顔。今すぐ俺に何かをしますよって顔で俺を見てくる。
「そうだな。腹も膨れたし、そろそろ……」