投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

双子よめ
【ラブコメ 官能小説】

双子よめの最初へ 双子よめ 0 双子よめ 2 双子よめの最後へ

お嫁さんはどっち?-1

『大きくなったら、わたしか彩花。どっちとけっこんするか選んでくださいねー』
『ちゃんと選ばないと怒るんだからな!』
 幼い頃に交わした約束。どちらかを選び、どちらかを捨てなければならない選択。
 その約束は未だに果たされていなくて――俺は答えを保留にしたままでいる。

「りっくん……朝ご飯は何にしますか?」
「何でもいいぞ。彩菜の好きにしてくれ」
「何でもいいっていうのが一番困るんですけどね……ですが分かりました。未来のお嫁さんとして、りっくんのオーダーにきちんと応えましょう」
 困ったような、だけど何処か嬉しそうな顔を浮かべながら台所へと向かう彩菜。
 こいつは青葉彩菜。俺の幼馴染の女の子の一人だ。毎朝、甲斐甲斐しく俺の家へと来ては色々と世話を焼いてくれる。
 特に台所は彩菜にとって聖域らしく俺が台所に立とうとすると、物凄い剣幕で怒られてしまうほどだ。
 彩菜曰く、台所はお嫁さんが一番輝く場所だから――とのことである。
 そんな彩菜の一番輝く瞬間を横目にテレビをつけて料理が出来上がるまで暇を潰す。
 先ほど彩菜が呟いた『未来のお嫁さん』この言葉にはちょっとした経緯がある。
 幼い頃から俺と彩菜。そしてもう一人、彩菜の双子の妹である彩花は家が隣同士ということもあって、両親共々仲良くしていた。
 ほとんどの時間をこの三人で遊んで過ごしていた。
 特によくおままごとで遊んでいた。正直、俺は他のことをしたかったのだが、彩菜と彩花、この二人に押し切られては俺も抵抗は出来ない。
 だから半分渋々ではあったが、三人でおままごとをして遊んでいた。
 そして、おままごとといえば、それぞれの役割があるわけで――それでよく彩菜と彩花は、どちらがお嫁さんの役をやるかで揉めていた。
 もちろん俺は旦那役である。
 そんな遊びの延長なのか、二人は完全に俺と結婚をする気になっていた。
 ただ夢見る乙女的、思考回路ならまだマシだったのかもしれないが、それを聞いた親達が両手をあげながら喜びを表現し、結婚式はいつにするだのどんなドレスを着るだの盛り上がり始めて、収拾がつかなくなってしまったのだ。
 俺自身、二人のことは嫌いではないし、見た目も性格も好きではある。しかし法律として二人同時に結婚なんか出来るわけもなく、結果としてどちらかを選ばないといけないわけで――
『大きくなったら、わたしか彩花。どっちとけっこんするか選んでくださいねー』
『ちゃんと選ばないと怒るんだからな!』
 ――という過去の約束事に戻るわけだ。約束をしたあの頃から随分大きくなり、法律的にも結婚をすることが可能な年齢になった今も、俺は約束を果たせずにいる。
 世間一般ではこういう奴のことを『ヘタレ』というのだろう。しかし、しょうがないじゃないか。彩菜にしろ、彩花にしろ、それぞれの良さがありそれぞれの魅力があるのだから。
「はい、りっくん。ご飯の準備が出来ましたよ」
「ああ、ありがとうな彩菜」
 ポンポンと彩菜の頭を撫でる。
「えへ……えへへっ♪」
 彩菜は昔から俺に頭をポンポンと撫でられるのを気に入っている。俺が頭を撫でると嬉しそうに頬を緩ませ、目を細める。
 猫の喉をゴロゴロとした時のような反応に似ているかな。まぁ、実に可愛らしいと思う。
「あー! 何、二人でイチャイチャしてんだよー! あたしという嫁を蔑ろにして彩菜とイチャつくとは、どういうつもりだよ陸!」
「おー、やっと起きたのか。相変わらず朝に弱いな彩花は」
「うるさいなー、あたしは低血圧だから仕方がないんだよ。てか、それと彩菜とイチャついていたのは関係ないだろ!」
 来て早々、がぁーと文句をぶつけてくる。彩菜の双子の妹の――青葉彩花。明るく元気が特徴の『未来のお嫁さん』である。
「彩花。あまり大きな声を出してたら、りっくんに迷惑でしょ」
「め、迷惑って……彩菜が陸とイチャついてるのが悪いんじゃんか!」
「それは彩花が起きるのが遅いからでしょ。それにこれは、朝食を作った私へのりっくんなりのご褒美なのよ。そう、料理を作った私への……ね」
「うぐ……っ」
「彩花も頭を撫でられたいのなら、美味しい料理を作ればいいのよ」
「ぐぬ……っ」
 今にも『おーほっほっほ!』と高笑いが聞こえてきそうな顔でチクチクと彩花に口撃をする彩菜。
 料理上手の彩菜と違って、彩花はかなりの料理下手なのである。それゆえの今の台詞……実の妹に対して容赦がなさすぎるだろ。
「りっくんのお嫁さんとしては料理くらい出来ないとね」
「ぐぬぬぬ……」
 あぁ、あぁ……彩花の顔が段々と歪んできて――このままだと泣き出してしまいそうだな。
「はいはい、彩菜。あまり彩花を苛めるなよ。それに彩花、別に女の魅力は料理だけじゃないからな」
 確かに料理は魅力の一つではあるが、それが全てではない。料理が出来ない彩花にも、彼女だけの魅力というものがあるのだ。
「りっくんったら……すぐに彩花の肩を持つんだから……」
 俺の言葉に、むすっと頬を膨らませる彩菜。
「……うん」
 泣き出しそうな顔から一転、安堵したような顔に変わる彩花。二人のコロコロと変わる表情を見ているのは実に楽しい。
「よし、冷める前にご飯を食べようぜ」


双子よめの最初へ 双子よめ 0 双子よめ 2 双子よめの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前