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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第8話-3


「………」
 曲線波長が収まれば、理性的な思考が戻る。そして、エロスの真っ最中に悶え狂っていた自分の記憶が、恥じらいと共に蘇ってくるのだ。
「…エッチ」
「う」
 それが、大和を責める様な視線となったのは、今日のセックスがいつもに比べて、激しいものだったという自覚があるからだ。
「おしり、じんじんしてる…」
 臀部へのスパンキングが、何よりの証であった。
 それ自体は、特別珍しいことでもないのだが、後に残る痛みの強さによって、大和がどれくらい性の昂ぶりに飲み込まれていたのかを知ることが出来る。
 そして今日は、おそらく過去最高のスパンキングであった。
 それは、ふたつに割れてしまったお尻の肌から感じ取ることが出来た。
(ふたつって、当たり前だよ)
 …古典的であると言って欲しい。
(それ、どっかで聞いたことあるけど)
 …既視感であると知って欲しい。
「ごめん、桜子。調子に乗った」
 その割れているお尻が、サルも驚くほどに真っ赤なのは、大和が遠慮呵責なく叩いたからだ。
「痛かったよね」
 それを宥めるように、大和の手のひらが優しく撫で回してきた。
「ひあっ!」
 思いがけない労りの手触りは、しかし、お尻の肌に広がる性感帯をしっかりと刺激してきて、桜子の背中をぴんと反らせていた。
「も、もう。そんなにナデナデしないでよぉ」
「罪滅ぼしさ」
「うそだぁ」
 手つきが明らかにいやらしい。相手が桜子でなければ、間違いなくセクハラで訴えられるレベルだ。
「ごめん、ごめん。でも、気持ちいいからさ…」
「あたしの、おしりが?」
「この手応えが、さ。なんだか、安心するんだ」
「う、うーん?」
 お尻を触って安心する。少しばかり、危険な香りがしてしまう。
「チカンになっちゃうよ」
「こんなこと、桜子にしかしない」
「う、うーん?」
 つまり、あたしのお尻は触るんだよね? と、喜んでいいのか、多少は微妙なところではあったが、セクハラとは全く違ういたわりの気持ちが大和の手にあり、それに撫でられる行為を、いつのまにか桜子も、気持ちよく受け止めていた。
「もう、1年なんだね…」
「僕らが、出会ってから?」
「うん」
 臀部へのスキンシップだけでなく、フレンチキスも交えた“後戯”をたっぷり愉しんでから、後始末を済ませ、そのまましばらく寝物語を交わした。
「入れ替え戦かぁ」
 二人が所属する双葉大軟式野球部が、2部リーグでの優勝を決めてから1週間が過ぎていた。そして、本当の決戦とも言える“1・2部入れ替え戦”は、1週間後に日程を組まれていた。
 大和は、試合のある1週間前には、桜子を手元から離す“禁欲生活”に入るようにしているから、こうやって二人で過ごせる甘い時間は、今夜が最後であった。
「早いよね」
「?」
「だって、去年は大和といっしょに見ていた試合に、今度は自分たちも参加するんだよ。ちょっと、不思議な感じがする」
「ああ…」
 大和は、いまこうやって身体を寄せ合い、温もりを分け合うこの愛しい少女と出会ってから、1年が過ぎようとしていることを初めて意識した。
「あっ……」
 不意に、その愛しさがどうしようもないくらい膨れ上がって、大和は桜子の頭を丸ごと抱えるように腕の中に抱きしめた。5センチほどある身長差(桜子の方が高い)は、横になっているから関係がない。
「桜子、好きだよ」
「大和……」
 そうストレートに言われると、胸がときめいてしまう。
「あたしも、好き……大好き、だよ……」
 お尻を叩かれようとも、撫でられようとも、大和といっしょに居られるこの瞬間を思えば、それは瑣末なことでしかない。
(そういえば……)
 1年前、大和は自分との出会いを“運命かもしれない”と言っていた。
(きっと、そうだよ……)
 自分を包み込んでくれる、暖かくて力強い感触。それが生み出してくれる、途方もなく大きな幸福感。
 オーロラのような光さえ感じる、大和の暖かさに覆われながら、桜子はまどろみを覚え、気がつけば安らかな眠りの世界に意識を漂わせていた。
「おやすみ、桜子」
「ん……」
 それでもしっかりと、彼の優しいささやきは耳に届いていた。



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