『SWING UP!!』第8話-27
「品子……」
「ん……雄太ぁ……ん、んちゅ……」
引き合うように体が重なり、そして、唇も触れ合っている。不意に思い出してしまった記憶の中の、愚かしい自分を懺悔しながら、雄太は品子を優しく抱きしめて、熱い口づけを贈っていた。
「ん……なんだか、遠慮がち……」
「そ、そうか……?」
「ひょっとして……思い、出してるの……?」
「………」
「バカね……気にしなくて、いいのに……」
交際を申し込んだときに、浮かべてくれた宝玉の微笑み。そのときの表情のまま、品子は唇を甘くかみ締めてきた。
敵わない、と思う。自分の考えていることを、彼女は完全に把握していて、それで落ち込みそうになると、逆に優しく労りの心を示してくれるのだ。
「やっぱり、さ……考えちまうんだよ……」
今日の雄太は、確かに感傷的になっていた。2部リーグで優勝し、入れ替え戦にも勝利して、ついに大願を果たしたという達成感が、逆にそういう気分にさせてしまっているのかもしれない。
「自分のアホさというか……品子に、もっと、優しくしてやれなかったコトが……さ」
「雄太……」
「女の子にとっちゃあさ、やっぱ、初めてって特別なモンだろ? 品子にそれを、きちんとしてやれなかったってのは……人生最大の大失点だぜ……」
「………」
雄太の様子がいつもと違うのに、品子は気がついている。
彼が抱く感傷の強さが、その胸の奥にある古傷を呼び覚ましているのだとしたら、
(私しか、彼を癒せない…)
そう考えるのが、品子であった。
品子本人としては、望まない形で純潔を散らした時は確かに、やるせない感情を抱いたのも事実だ。だが、その相手が雄太だったことが、その感情よりも大きな喜びに似た感覚を生じさせていた。ずっと秘め続けてきた本願が、どういう形にせよ果たされたことが、何より品子にとっては嬉しかったのだ。
また、雄太が自分を幼馴染ではなく女として認識して、交際を申し込んでくれた時点で、自分の全ては報われたと思っていた。望まない形で散らした純潔の結果がそれだというのなら、彼女は多分、来世でも迷いなくそれを選ぶだろう。
雄太に愛されること。それに勝る喜びなど、品子には存在しない。
「ねえ、雄太……」
「ん?」
「私は、貴方に、全部をあげたい……」
「品子……?」
雄太と重ねてきた性愛の行為で、最初に捧げた花の操はもちろんだが、性的に熟れていく中で、口戯によって彼を昇天させたこともある。
「あなたに、あげたのは、ここと……」
雄太の手を取り、その指先を唇に這わせた。わずかに触れただけにもかかわらず、その口の中で初めて果てたときの興奮が鮮やかに蘇る。
「ここ……」
そのまま導かれるように、指先が品子の太ももに降りた。柔らかい感触のある陰部へと指先が至り、雄太にとっては痛みの伴う記憶が、頭の隅を走る。
「あと、残ってるのは……」
不意に、品子がくるりと背を向けた。そして、後ろ手に改めて雄太の手を取ると、今度はそれを、衣服の上からでもわかるくらいの瑞々しさを湛える、臀部の間にそっと押し当てた。
「ここ、だけ……」
「!?」
その意味を知らぬ、雄太ではない。
「し、品子……」
「全部、あなたにあげたい……私の初めては……全部、あなたに……」
「………」
迸る愛情の激しさに、雄太の劣情は一気に膨らんでいた。