ある一日-1
九条家という金持ちのお嬢様。そのお嬢様の家庭教師を引き受けただけのはずなのに……
気がついたら、九条家に婿入りをするという不可解な現象に巻き込まれた。
いや、最終的に撫子に手を出してしまったのが原因だが、まさかこんな展開になるとは思わなかった。
本当に、こんな展開になるとは……
「おはようございます、彼方さんっ♪ 今日も素敵な一日になるといいのですが……」
「少なくとも、平穏な一日を過ごすことは出来ないと思ってるよ」
「それは、わたくしを弄るという意味でなのでしょうか?」
「は?」
「いやんっ♪ 彼方さんったら、朝からわたくしの身体を求めてくるだなんて、スケベなんですから!」
「…………」
朝っぱらから、高いテンションの撫子。
顔を赤らめながら、身体をクネクネと動かしている。スケベなのは、どう考えても撫子の方だろうが。
「HAHAHAHAHA! 朝から仲睦まじい光景を見せてくれるとはね。これはもう、孫を抱き上げる日も近そうだ」
豪快に嗤いながら、バシバシと俺の肩を叩いてくるオッサン――もとい、お義父さん。
金持ちだからか、元からおかしいのか、行動の読めない変態だ。
「彼方ちゃんは、頭の回転だけじゃなく手もアソコも早いのね〜♪」
「…………」
もう、突っ込むのも嫌になる。だけど、一応突っ込まないといけないんだろうなぁ。
「……教授。何で、貴女がここに居るんですか?」
ここは九条家の屋敷の中。普通の人間が簡単に入ることが出来る所じゃない。
まぁ、教授は確実に普通の人間じゃないけどな。オッサンと知り合いらしいし。
それでも、今この時間、この場所に居るのはおかしいことだ。
「何でって、さっきまで九条ちゃんとお酒を飲んでたからよ〜♪」
「あぁ、君と一緒に飲む酒は格別に美味しいからな」
「私も九条ちゃんと一緒に飲むお酒は好きよっ♪」
「「あっはははははっ!!」」
無駄にテンション高く笑いあっている二人。酒か!? 酒に酔っているからのテンションなのか!?
いや、この二人は通常時でもこのテンションなんだろうな。
側に居るだけで疲れるようなテンション。
俺、本当にここで上手くやっていけるのだろうか? 少しだけ不安になるよ。
「大丈夫ですわよ彼方さん」
「撫子……」
「わたくしは、お父様達に見られながらでも構いませんわ♪」
「話の流れがおかしいからな。マジで勘弁してくれ」
「ぶぅ……彼方さんは、いけずです」
「いけずなのは撫子の方だよ……色々な意味で」
はぁ、少しだけ悲しくなってきた。
え? 何が悲しいのかって? それは、その内俺もこのテンションに慣れていってしまうことだ。
完全におかしい方の部類に行ってしまう。それが普通になってしまう。
それが、少しだけ悲しく思ってしまうよ。
「あぁ、そうそう彼方くん」
「はい? 何ですか」
「頑張ってくれよ」
「……はぁ」
何故か急に励ましの言葉をかけられてしまった。
何で、このタイミングでそんな言葉をかけてきたのだろうか?
まったく意味が分からない。何の意味が……なんて思っていたが、その答えは昼頃に出てきた。
「う、うぐ……っ!?」
「大丈夫ですか、彼方さん♪」
「何……で、お前は笑顔で人の心配をしているんだよ……?」
普通は、不安そうな顔で心配するモノじゃないのか?
少なくとも笑顔で心配するのは間違っている。
「ぐぁ、あぁあ……っ!?」
身体が無性に熱い。特にある一部分が果てしなく熱い。
ムラムラとしてきて、そして勝手に――自分の意思に反してチンコが勃起していく。
「まぁ♪ まぁっ♪」
勃起しているチンコを見て、嬉しそうな顔をしている撫子。
口元から軽く涎を垂らしながら、俺のチンコを見つめてきている。
「撫子……?」
「さすがお父様ですわ。超強力な精力剤を彼方さんの朝食に混ぜるだなんて」
「あ……?」
待て。今おかしな言葉が聞こえた。
超強力な精力剤? 朝食に混ぜた?
おいコラ。どういうことなんだよ!?
「凄い。凄いですわ。彼方さんのおちんぽが、ズボンの上からでも分かるくらいに大きく。そして震えてます♪」
じゅる、じゅるり。と涎を啜っている撫子。
『頑張ってくれよ』――この時になって、オッサンのあの言葉が頭の中を過ぎった。
「そ、そういうこと……か!」
頑張れというのは、撫子に勉強を教えることでも、俺が九条家の――金持ちの作法を勉強することじゃないのか。
俺が頑張ること。それは、撫子との『子作り』なのかよ!?
「お父様。わたくし、必ずやお父様のご期待に応えますから!」
「応えんでいい! つーか、俺に近づくな!」