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僕の魔王討伐史
【コメディ 官能小説】

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魔王討伐史-1

 数十年前に一度、世界を救った英雄。それが僕のお父さんであり、世界中の人々からは
勇者様と慕われていた人。そんな父親の子供である僕はごく普通の生活を送っていたはず――なんだけど……
「偉大なる英雄の血を引く者よ。お主に一つ頼みごとがあるのじゃが……」
「あ、はい。何でしょうか王様」
 朝、お母さんに無理やり叩き起こされたと思ったら、いきなりお城に行って王様に会え
だなんて言われて王様の所に来たわけなんだけど……頼みごとって一体、何なんだろう?
 当たり前だけど王様に頼みごとなんて今までされたことなんか無いし、そもそもお城に
呼ばれるということ自体がなかった。まぁ、お父さんについていって何度かは足を運んだ
ことはあるけど、僕個人がお城に向かうことなんて初めてのことだ。
「この世界は一度、お主の父親によって平和を取り戻しておる」
「はい、それは知っています」
 世界を救った英雄。それは僕の自慢の一つだから。大した特技のない僕が声を大きくし
て自慢できることだから。それは誰よりもよく知っている。
「そう。かの英雄が作ってくれた平和な一時。それは世界中の人間が望み願い続けた日々。
 誰もが英雄に感謝し、尊敬と憧れを持っておる。しかし、今や再びこの世界に暗雲が立
ち込めようしておるのじゃ」
「暗雲……がですか?」
「そうじゃ。魔王が再び、この世界を支配せんとしておるのじゃ」
 お父さんが築き上げた平和な世界。その平和を脅かそうとしている魔王がいる。
 これは誰かが……いや、お父さんの力が再び必要なのかもしれない。きっと王様も僕に
それを伝えたいのだろう。
「王様。お父さんの力がまた必要なのですね?」
「確かにかの英雄の力があれば世界を平和に導けるかもしれぬ。しかし、もう彼は勇者と
して戦うには些か年を取りすぎておる」
 確かに、今のお父さんの年で冒険をするのは厳しいかもしれない。でも、お父さんの力
を借りないとすれば、何で僕が王様に呼ばれて――
「そこでじゃ、英雄の血を受け継いでおるお主に魔王の討伐を依頼したいのじゃ」
「…………え? えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇっ!?」
 は? え? このオッサンは何を言ってるの? 僕がお父さんの代わりに魔王を討伐し
ろだって!? 無理無理無理。そんなの出来るわけがないじゃないか。自分で言うのも悲
しいけど、僕には何一つ特技がないんだよ? そんな状態で魔王の討伐なんか出来るわけ
がないじゃないか。それどころか外の魔物を倒すことすら出来ないよ。すぐに魔物に殺さ
れてすぐに人生のゲームオーバーだよ。親よりも先に死ぬとか、どれだけ親不孝なんだよ!
「お、王様! む、無理ですよ。僕にそんなこと出来ませんって!」
「英雄の血を引いておるお主なら可能なはずじゃ。それにお主の両親にもきちんと了承は
得ておる。何も心配する必要はないぞ」
 心配しかないよ! てか、何で二人とも勝手に了承してるんだよ!? 親ならどれだけ
僕が平凡な人間か分かってるでしょ! それなのに旅に出すとかどれだけ非情なんだよ!?
「お主に拒否は許されぬ。これは国王としての命令じゃ。仲間と共に魔王を討伐してくるのじゃ」
 このオッサン。ついに命令とか言い出したよ。最初は頼みごととか言ってたのに、国王
として命令してきたよ。つまりは絶対に逆らわせないというわけだよ。
「旅に必要なモノはお主の母親に渡してある。それを持って酒場に行き、共に魔王を討伐
してくれる仲間を探し、外へと繰り出すのじゃ」
 このオッサン。僕に何も意見をさせる気はないらしい。どんどん話を進めていき、無理
やりにでも勇者として魔王討伐をさせるみたいだ。
 こっちとしては命令の時点で逆らえないのに、軽く文句を言う隙も与えないとか酷すぎでしょ。
「さぁ、行くのじゃ」
「…………分かりましたよ。行けばいいんですね」
 もう諦めてお城から出るとしよう。命令された以上は魔王討伐に向かわないといけない
し、せめて強い仲間が見つかることを祈るしかないね。
 でも、その前に一つだけやらなければならないことが――

「あら、お帰り。王様の話はどうだった?」
 このニコニコと笑みを浮かべているお母さんに文句を言わないといけない。勝手に旅に
出すことを了承したことだけは許さない。少しくらいは相談してくれてもいいはずなのに。
「お母さん! 何、勝手に色々と決めてくれてるんだよ! 僕は普通の子供だっていうの
はお母さんが十分理解しているでしょ!?」
 勉強も運動も人並みくらいにしか出来ない。そんな僕が魔王討伐だなんて冗談にも程がある。
「大丈夫よ。あなたはお父さんの子供なんだから」
「それだけで魔王を倒すなんて出来るわけがないよ!」
「あら、お母さんを疑うのかしら?」
「そういう意味じゃなくて、勇者の子供だから同じように勇者であるとは限らないって話だよ!」
 その血を引いていたからといって、同じ存在になれるわけではないんだ。
「あらあら、あまりうるさいと王様に頂いたお金をあげないわよ?」
「すいませんでした。ごめんなさい。お金をください」
 強制的に旅に出ないといけないのに、何もない状態で出るだなんて狂気の沙汰だ。
 せめて旅の支度が出来るくらいのお金はください。


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