魔王討伐史-9
僕を完全に置いてけぼりにして会話に華を咲かせる三人。どうしてそこまで三人は僕と
セックスをしようとしているのだろうか? まぁ、求められる分には悪い気はしないんだけどね。
「みなさん、おはようございます」
「おう、おはよう」
「はい、おはようございます勇者様」
「おはよ〜勇ちゃん。昨日はお楽しみでしたね♪」
「うぐ……っ!」
あまり昨日のことを掘り返さないで欲しい。気持ちよかったけど、ある意味では地獄を
見たような気分だから。
「今日はわたしとエッチしようね〜勇ちゃん」
「あ、ダメですよ! 今日は私としてもらうんですから!」
「いやいや、今日もあたしが勇者のチンコを頂くぜ?」
「な――っ!? あなたは昨日エッチをしてもらったのですから、参加権はありませんよ!」
「そうだ、そうだ! 一人増えるだけで確立がぐっと減るんだぞ〜」
「だが、それも勝負だろ? マンコに勇者のチンコを入れたいのならあたしに勝てばいいのさ」
「うぐぐ……っ、正論をぶつけてくるとは……」
「これは戦士ちゃんに意地でも勝つしかないみたいだね」
「はん、悔しかったらあたしに勝ってみな」
バチバチと火花を散らす三人。旅に出る前から、かなり険悪ムードなんですけど……こ
れって大丈夫なの? 戦いでの連携に支障をきたしたりはしないの?
「あ、あの――みなさん!」
「ん?」「はい?」「な〜に?」
「あ、いえ……その――」
あれ? 皆の表情が凄い穏やかなんだけど。それにかなり息の合った返事だったよ。
「け、喧嘩はよくないと……」
「あん? 喧嘩なんかしてないぞ」
「え……?」
「そうですよ勇者様。私達は喧嘩なんかしてませんよ」
「そうそう。わたし達は仲がいいからね〜♪」
「いや、でも――さっきまで……」
空気がかなりピリピリとしていて、正直同じ空間にいるのが嫌だったくらいなんだけど。
「ああ、あれはまた関係ない話ですよ。勇者様の取り合いに関しては譲る気はありません
けど、それ以外では仲良くしていますので」
「そそ。勇ちゃんに絡まないことに関してはね〜♪」
「つーか、もともと勇者のことに関しては揉めないために色々と取り決めをしてるからな」
「いつの間に……」
そんな謎の取り決めをしてるんですか? いや、まぁ……基本的に三人の仲がいいとい
うのが分かっただけでも十分だけど。それでもこれってどうなんだろうね。
「さて、勇ちゃんの疑問も晴れたことだし、次の町に向けてしゅっぱーつ♪」
「――と、ダメですよ。次の町を目指す前にこの町で買い物をしなくては」
「そうだな。あたし達は余裕だが、勇者が微妙だからな。きちんと装備を整えたほうがいいだろう」
「……なんかすいません」
僕一人だけが足を引っ張っているみたいで、なんかごめんなさい。
「いいえ。勇者様は何も気にする必要はありませんよ」
「勇ちゃんはわたし達に癒しを与えてくれれば、それでいいんだよ〜♪」
「ああ。むしろ勇者には装備よりも精力のあがる薬でも買った方がいいかもな」
「は、はは……」
薬漬けにされてセックスを強要されるのは勘弁して欲しいですよ。
「まぁ、とりかく買い物に行きましょう」
「「「おー」」」
色々と引っかかる部分はあるけど、とりあえず買い物へと向かうことになった。
ここでは本格的に僕の装備を一新してガチガチに身を固めた。そして他の三人はというと――
『おお、見ろよこの下着。かなり際どくないか?』
『ええ。確かにこれは際どいですね』
『そうかな〜? わたしは普段からこういうの穿いているからなんとも思わないかな』
『こ、こんなのを普段からですって!?』
『さすがだな。いくらあたしでも、ここまでのはキツイわ』
『えへへ〜褒めて褒めて♪』
『褒めるべきか微妙ですね……』
と、いう会話から始まり――
『あぁ……水着ですか。そういえば去年は水着を着る機会に恵まれませんでしたね……』
『おいおい、何急に水着を見て落ち込んでるんだよ?』
『戦士さん。あなたは水着を着ましたか?』
『いや、ここ何年も着てないな』
『『はぁ……』』
『と、いうよりここら辺の海ってあまり綺麗じゃないんだよね』
『そうですね。そしていい男もいない、と』
『それは一番の問題だな』
『水着を着る意味が半分以上、失われるよね』
水着を見ては、世の男共に文句を言い――
『勇ちゃんのためにも、ここは一つエッチな道具でも買ったほうがいいのかな?』
『いえ、必要ないでしょう。勇者様には私達が居るのですから、性処理には困らないはずですよ』
『いやいや〜そういう問題じゃなくて〜』
『プレイの幅を利かせるために購入するのか?』
『そそ。あまり普通のエッチなんかしても面白くないでしょ?』
『う〜ん……私は普通のエッチの方が好きなんですけどね』
『ま、それは人それぞれだな』
『そだね〜じゃ、これを買っちゃおうかな♪』
冒険にまったく関係のないモノを買ったりする始末だ。まともな買い物をしたのは僕だ
けという、なんとも不可思議な現象が起きてしまっている。
色々と無駄なことをしているにも関わらずお金に余裕があるのはさすがだと思うよ。
「さて、買い物もあらかた終わりましたし、次の町に出発しましょうか」
「ああ。あまりここに長居すると次の町に到着するのが遅れてしまうからな」
「夜に到着するのは嫌だもんね〜」