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ガラス細工の青い春
【純愛 恋愛小説】

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 雨が教室の窓ガラスをうるさく叩いている。教師の話し声が自然と大きくなる。窓の外の景色は窓ガラスを伝う雨水で歪み、室内は鬱陶しい湿気を帯びている。
 前日から圭司は風邪をひいて学校を欠席していた。仮病ではないかと優斗が電話を掛けたそうだが、「酷い声だったよ」と話していた。明日からは定期テストが控えている。昨日今日と、教師が「ここはテストに出すからなー」と明言する授業が多く、圭司はそれを聞き逃している。まぁ、出席していた所で授業を真面目に聞いていたかどうかは定かではないな、と清香は一人納得する。
「ねぇ、これってタイミングじゃないの?」
 咲は休み時間に入るなり、清香のワイシャツの背中を掴んだ。咲の方に身体を向け「何の」と面倒くさそうに清香は問う。
「告白だよ。テストに出る所をノートに書いてあげてさ、『好きです』のひと言と一緒に、届ければいいじゃん! 家すぐ近くでしょ」
「えー、そんなの断られたら何か凄い気まずいじゃん」
 手で払う仕草をすると、咲はその手をがしっと掴み、「大丈夫」と清香の瞳を見つめ、言う。その目が真剣そのもので、拠り所はないと思われる自信に溢れていて戸惑う。
「ダメだった時のフォローはするから、ダメって決めつけないでやってみようよ、ね?」
 自分の事のように必死になって説得する咲に、初めは「いやーでもねー」とうやむやに返事をしていた清香だったが、何故か強い調子で「嫌だ」とも言えなかった。そのうち成り行き任せに「うーん」と頷いた事になってしまった。清香は言ってから手の平に嫌な汗をかき「フォロー、してね、ちゃんと」と口を尖らせ言葉を落とす。
「任せとけって。つーか自身持て!」
 咲は両の手に拳を握ってニカッと笑っている。いつでも真っ直ぐに突き進む優しい咲と、それを見守っている留美、幸恵なら、うまくフォローしてくれるのだろうと信じる事にした。
 英語のノートを机から出し、手帳のメモページをミシン目で切り落とすと、「英語だけでいいか」と独りごちて、ポイントだけ分かりやすく書き出した。
 通りがかった優斗に何をしているのかと問われ、告白する事を小声で告げると、目をまん丸にした優斗が「マジでか!」ととんでもない声で叫ぶので、みぞおちに一発コブシを入れた。
「協力して。圭司のメールアドレス知らないの。教えて」
 優斗は鼻歌混じりにポケットから緑色の携帯を取り出すと少しボタンを操作して「ほい」と画面を見せる。清香は自分の携帯にそれを入力し、「ありがと」と言って携帯をパタンと閉じた。優斗は清香の机にあるメモに目を落としている。
「俺にもそのまとめメモ、ちょうだいよ」
 清香は「え」と言ってから、断る理由もないと思い「コピーしてくるならいいよ」と言ってメモを渡した。優斗は図書室にあるコピー機でメモをコピーし、戻ってきた。




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