すれ違いV-1
「お前が神官を気にするのは・・・罪悪感からではないのか?」
ゼンに抱きしめられている葵の肩が小さく跳ねた。戸惑いがちに葵が顔をあげる。
「・・・そうかもしれません。
彼らを神官にしたのは私・・・彼らには彼らの人生があったのに・・・」
「葵・・・早く俺を選べ・・・
俺以外の男のことを考えるな・・・」
わずかに体を離したゼンは葵の目元に口付けを落とした。不安な葵はゼンの胸元を握りしめ、その身を彼にゆだねていた。
――――・・・
「町に帰っちまったか?」
軽い身のこなしで木々を渡る蒼牙は風のように駆けまわっていた。眼下では大和もかなりの速さで森をすすんでいく。
「いないな・・・」
水の音が聞こえて走る速度をゆるめると、小さな川が目の前に迫った。
上流のほうに目を向けても何もなく、下流は町へと続いていた。
「このまま町まで行くか?」
蒼牙が大和の隣に降りると、頷いた大和は下流へと足を向けた。
すると間もなくして・・・
「いたぞ」
人の姿を見つけた蒼牙は音もなく秀悠の前へとまわりこんだ。
「ぅわっ!!」
驚きのあまり腰を抜かしそうになった秀悠は前後に立つ二つの影を見て困惑している。
「あんたさっきの人間だろ?」
蒼牙が秀悠に問いかけた。大和はゆっくりと蒼牙の隣へと並び、秀悠をみつめる。
「あなたは・・・」
先程、蒼牙と顔を合せていた秀悠は大和の姿を確認し、彼も神官であろうことを予測していた。
「こいつの名は大和だ。俺は蒼牙」
木に寄りかかりながら蒼牙が大和を紹介すると、大和が律儀に頭をさげた。
「私は秀悠と申します。縁あって昨日、葵さんと仙水さんに助けていただきまして・・・」
「ふーん・・・」
いきさつをあまり知らない蒼牙は横目で秀悠を見ながら大人しく耳を傾けている。
「・・・で、秀悠さんは彼女とどんな話を?」
頭の回転がいい秀悠は、大和のその言葉から葵の態度に異変があったのだろうと考えた。