生徒はお嬢様!?-16
「じゃあ何を望むんだ?」
「今回は……彼方さんに膝枕をして欲しいですわ」
「膝枕か」
それならば何の問題もなさそうだな。男の膝枕が気持ちのいいものかは知らないが、キ
スを強請られるよりはマシだろう。
「分かった。膝枕をしてやるよ」
「はい♪ ありがとうございます!」
「まぁ、それはこの問題を解き終わったら言ってくれ」
「うぅ……そうですわね。わたくし頑張りますわ」
褒美のおかげで、大分やる気が出てきたようで時間をかけながらも問題を解いていく。
確かに撫子はバカでアホだが、決して頭が悪いわけではないと思う。ただ少しやる気と
応用が下手なだけだろう。だからやる気を出させてやればある程度のことは出来るはずだ。
九条の娘は伊達ではないといったところか。
「――で、できましたわ!」
「じゃあ、見せてもらおうか」
用紙を受け取り、出来を見る。果てさて、どこまで間違わずに出来ているか見物だな。
「ほぉ……」
問題の一つ一つに目を通して驚きの声をあげる。まさかあれだけでここまで正解率があ
がるとは思わなかった。ここまでくるとわざと頭の悪いふりとしているのかと疑うほどに。
まぁ、コイツの場合は本当にやる気の問題なのだろうな。そこまで考えるとコイツは、
本当に小さな子供のようだな。
「ど、どうでしょうか……?」
緊張した面持ちで回答の出来を聞いてくる。
「悪くはない。よくここまで頑張ったな」
「は、はわわ……っ」
嬉しさのあまりグリグリと撫子の頭を撫でる。あまり俺の指導が役に立ったとは思わな
いが、それでも教師としての立場から見ると、教え子が頑張って問題を解くと嬉しいものがある。
「か、彼方さん……そ、それでご褒美の件ですが……」
「ああ。分かっている。膝枕だろ? ここでいいのか?」
「あ、はい。今すぐここでお願いします」
撫子に求められるままに膝を差し出す。そしてその膝に恐る恐る頭を乗せ、横になる撫子。
「固くて、あまり気持ちのいいものじゃないだろ」
男の膝なんて女ほど、気持ちよくはないと思うけどな。
「そんなことはありませんわ。彼方さんの膝、とても気持ちいいですわよ」
「そうか……」
撫子がそう言うのなら、それでいいだろう。俺がどうこう思うのではなく、撫子がどう
思うのかが重要なのだから。
「彼方さんの膝、本当に気持ちいいです…………わ……っ」
よほど疲れていたのか俺の膝に頭を乗せて、すぐさま眠りについてしまった撫子。
まぁ、あれだけの量の問題をこなしたのだ。疲れて眠ってしまうのも仕方のないことか。
「んぅ……ぁっ、んぅぅ……」
ほんと、気持ちよさそうに寝息を立てている。撫子が眠ってしまったことによって、俺
は身動きが出来なくなってしまったわけで――
「……暇だな」
まさか寝るとは思わなかったから、何も用意していなかった。寝るのが分かっていたら、
暇つぶしのために本か何かを用意したのだが、今更そんなことを言っても遅いか。