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二兎追う方法、教えます
【学園物 官能小説】

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耽ける兎-1

「あのさ、タムラくん、サトウさんと何かあったの?」
「え? え、あ、いや、そんな事ないさ。なんで?」
「ううん、何となく今日は口数が少なかった気がして。サトウさんは、普通に見えたけど」

 来月の養護学校の訪問の関係で、先程まで生徒会室で打ち合わせをしていた。
 ヨウコは事前に養護学校の担当者と話はしていて、その内容を検討したのだ。
 内容は理路整然としていて、疑義を差し挟む余地もない。
 疑義があるとすれば、その前の俺との行為後の変貌ぶりだ。
 こんなまともな打ち合わせを、セックス後にパンツも履かずにやっているのだから俺も黙りこむというものだ。
 俺にはとてもついていけない。ヨウコという人間は、俺の理解の範囲を超えていた。
 
「いや、会長は凄いなって、思ってさ」
「そうね。サトウさんて、なんとなくわたし達とは違う感じはするわね」
「ハヤカワさんも、俺達とは違うさ。頭の出来が違うだろう?」
「そういう事とは違うのよ、サトウさんは。学校の勉強とか、そういう次元ではなくて、人間としての凄みを感じるの」
「話し聞いてると、俺が一番大したことない気がしてくるよ。ま、事実なんだけどさ」
「そんなこと……」

 俺とツキコの家は、高校から徒歩で通える距離だ。
 そして先日の約束通り、ツキコと一緒に帰ることになった。
 今はその下校途中という訳だ。
 ツキコは、おそろおそる俺の腕を掴んで言う。

「わたしは、大したこと無い人だと思って告白した訳じゃないのよ」
「……そうかな、ハヤカワさんは俺の事、買いかぶりすぎなんだよ」
「そんなこと、ないわ」

 掴んだ腕をツキコは自分の方に強く引いた。
 控えめなツキコが、この男は自分のものだと主張しているようで、俺は何か面映く感じる。
 最近はカップルで登下校する高校生など、さほど珍しくはない。
 目にすると羨ましいが、いざ自分がそういう立場になると、不思議な気もした。
 というか、そもそもツキコと俺は、まだ恋人という訳では無かった。
 俺がそうなる為の答えを保留しているからだ。


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