第5話 性交履歴書-2
私は、出会い系サイトに登録してから、2年ほどが過ぎようとしていた。
その中で、数名の男と交際まで発展して、身体も重ねていた。
もちろん身体目的では無く、自分の幸せ・・・家族の幸せを願っての事だった。
そうなれば、相手に求めるのは、必然的に職業、収入面が優先となっていた。
年齢に関しても、上下関係無くとも一番安定してる同年代ばかりだった。
実際に出会い、多少の好みであれば、妥協はしながらも積極的に交際をするようにもしていた。
交際する中で、求められれば、大概は拒否をする事も無かった。
中には、真剣な交際を頑なに貫こうと求める事も無いまま、私から別れを告げられた男も居た。
身体を確かめ合わずに、無駄に過ごす時間など私にとっては皆無だった。
それでも、ほとんどの男に求められて、身体を重ねてきた。
セックスになれば、誰もが私の身体に夢中になった。
先にも言ったが、歳は重ねているが体型には常に気を掛けており、細身の体は維持していた。
多少なれども醜い所もあるが、同年代の男達にしてみれば、愛し合える久々の上等な身体。
ほとんどが私の身体に溺れて、欲求を満たす性の道具にしていた。
中には、別れた女房を『メス豚』のようだったと比喩しながら、私の身体を嗜む者もいた。
無論、セックスを好む私としては、営みを楽しむ男達を歓迎していた。
期待に答えるべく、自らセックスマシンとなり、快楽にも溺れた。
ただ、私を乗りこなせる者が、誰一人も居なかった。
ほとんどの者が、最後に数回ほど腰つきを往復させて終わる、まるで動物の交尾のようなセックスに、私はうんざりしていた。
私は、性の道具にされるよりも、常にセックスマシンでありたかった。
なぜならば、それが前の夫との別れた原因だからだ。
お互い積み重ねた夫婦生活の中で、私の暴走していくセックスマシンに耐えかねた夫は、レスへと逃げた。
私は、満たされた日常生活には満足しているにも関わらず、満たされない夫婦生活だけには不満を募らせていた。
そんな満たされてない私だが、男遊びすら覚える暇なども無かった。
例え、夫の帰りが遅くとも、当時の二人の子供は小学生、幼稚園にと幼く、手が掛かる年頃だった。
唯一の慰めは、家族が出掛けた後の密かな時間に嗜む、無機質な冷たいプラスチックの振動だった。
それでも心満たされる事は無く、虚しく快楽に溺れるしかなかった。
やがて長男が中学に入る頃には、私も離婚を決意して、夫に別れる事を告げた。
原因は、セックスレスだけに、表沙汰にならないようにと、五分の和解でお互い納得した。
それ故に、慰謝料などは貰えず経済的にも追い込まれ、引き取った子供達を育てるにも苦労した。
もちろん再婚相手を探すどころか、もう一度独身時代のOLに戻って、必死になって働いた。
夫のセックスレスに耐えかねて別れた私だが、しばらくは男離れが続く皮肉な毎日が続いた。
やがて子供達も手が掛から無くなる頃には、仕事の実績が功を奏して、管理職までに就いた。
辛うじてだが、長男を大学まで進学させる程のゆとりが、家庭にも出来ていた。
ならば私も、いつしか再婚を意識し始めて、正規な出会い系サイトに登録した。
相手の希望に、職業、収入面が優先してしまうのは、私の家庭がまだ安定したゆとりでは無かったからだ。
いずれ、高校生の長女にもと、大学への進学を望んでいた。
まるで家庭の為にと自ら犠牲となり、汚れ役を買ってるようにも見えるが、不埒なベッドの上での面接を考えれば、同情する値にも満たさなかった。
私は、セックスレスが原因の離婚を立て前に、数々の男と身体の相性を確かめたが、セックスマシンと変貌を遂げれば、家庭を顧みずに快楽に身を委ねた。
無機質な冷たいプラスチックの震動で慰めた、数年間の寂しい思いを考えれば、尚更の事だった。
それでも、相手に求めるのは安定した職業と収入面だけは、譲れなかった。
さらに、身体の愛称ともなると、気の遠くなるような話だった。
やがて自己嫌悪に陥った私は、しばらく出会い系サイトから遠のいた。
それから半年も過ぎた頃に、私は再びサイトに繋いだ。
理由は、満たされない身体が、再び男を求めるようになったからだ。
例え、身体の相性が合わない出会い系サイトの男達でも、一度肌を交わしてしまえば女の悦びに満たされていた。
前の夫とのセックスレスからの長い潜伏期間を考えれば、どんな下手な男でも格別な物だった。
それから半年もの間、また男離れが続いた分けだから、尚更思いを募らせていた。
一度思い出させた男の身体は、私の身体をも疼かせた。
まるで中毒患者の様に、私は男を必要としていた。
私は再び、真剣な交際の名の元で、ベッドの上の試験官となった。
新たな履歴書の中から、若い彼に目が止まった。
志望動機は、性癖の理解を求めるような身体目的を伺わせたが、いずれ当社にて、ベッドでの面接を行う予定なので特に問題は無かった。
ただ気になるのは、彼が当社の年齢制限に満たしてない事と、収入面での格差があった事だ。
技術面に関しては、若さ故の無限の可能性に溢れて、当社も期待していた。
それでも、当社の方針としては、収入面と技術面との両立が、必要不可欠だった。
それ故に、経験豊かなベテランの社員を募集する事になり、年齢制限は高めに設定していた。
しかし、当社の願いも虚しく、収入面の書類選考に受かった全ての者が、ベッドでの面接で落ちるような、技術面に乏しい人材ばかりだった。
ならば当社としても、彼の様な人材が気掛かりになった。
もしかすれば、当社の規定に満たない収入面での格差を、彼の技術力によって補う可能性を見出したからだ。