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THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-8



「私の・・演奏家にとって大事な“忘れ物”は・・私を支えてくれる拓斗だったんだね・・。なのに・・私は・・逃げた・・アイツに、離れて嫌われたくなかったから・・!行ってきますって・・言えなくて・・!」

次々と、プールの水面に落とす悲しみと後悔の涙。
泣くことしか・・出来なかった。それ以外、もう何も出来ないのだから。
知らず知らずのうちに、我慢していた涙を5年ぶりに流した。



「・・・少し・・泣きすぎたな・・」

目元に残る涙を拭い、気持ちが落ち着いた瑞稀は眼をこすりながら立ち上がった。
その瞬間、ポケットに入っていたケータイが勢い良く落ちて、瑞稀が入ってきたプールの
柵まで転がってしまった。

「あ・・!っちゃー・・」

壊れてはいないだろうが絶対に傷ついただろうなと思い、ため息を付いた。
だが、自分のせいなのでそのため息もすぐにしまった。

「・・・ゴメン、ケーt・・」

瑞稀がケータイの近くまで行って、しゃがんだ時、目の前にあったケータイが上に持ち上がった。誰かに、拾われたのだ。
地面しか見ていなかった瑞稀はすぐ目の前に、男物の靴を視線に入れるとお礼を言うため、慌てて立ち上がり、顔をあげた。
すると、その顔が驚きの表情に変わっていく。
瑞稀の目の前に居る特徴のある黒髪の寝癖がある男性・・黒い長袖シャツにジーパンを着て片手に、瑞稀のケータイを持った“彼”は、瑞稀に眼を合わせると、言った。

「・・お帰り。瑞稀」
「・・・・・た、く・・と・・」


そこに居たのは、自分の最愛なる・・5年前に別れのメールを送った拓斗。
体格は男らしくなっていて、今、自分を呼んだ声が少し低くなっていた。

「どうして・・ここに・・。っていうか・・何で・・」


“自分の目の前に現れたのか?”
そう聞こうとした瞬間、目の前いっぱいに拓斗のシャツの黒色が広がった。
さらに、息切れこそは隠しているが自分のよりも早い心臓の音と、肩を上下に震わせている事が分かり、走ってきたのだと気づく。
そして、懐かしい拓斗の温もりが伝わると、やっと自分が抱きしめられている事に気づいて、抵抗を始める。

「・・!!な、ば、バカ!!離して・・!」
「バカはどっちだ!!!」
「・・・っ!!」

身体が、びくんと反応し、雷に打たれたかのように動けなくなった。
初めて聞いた、拓斗の強い怒り声。



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