THANK YOU!!-11
おまけ
場所を、小学校から瑞稀の家の近くにある公園へ移した二人。
瑞稀はブランコに座って小さく揺れていた。拓斗はブランコの囲いになっている手すりに寄り掛かっていた。
何故隣に座らないかというのは、拓斗が、瑞稀の姿をちゃんと目に入れておこうと思ったから。・・というのは瑞稀をごまかすための嘘で、本当は見惚れていて、隣に座るタイミングを見逃してしまっただけなのだが。
5年も経って、自分も成長したつもりだが瑞稀ほどではなかった。
改めて見る恋人は、凄く大人っぽくなっていた。
「・・・・・」
「・・そういえば、さ・・。」
見惚れていた瑞稀から、声がかかる。
なんだろうと思った拓斗はできるだけ考えていたことがバレないように優しい笑顔で瑞稀の顔を見た。
ありがたいことに、瑞稀の鈍感さは成長していなかった。
「私さ。アメリカ行く直前で、メール送った・・じゃん・・。」
「・・あぁ。コレか」
拓斗は、そこで自分のケータイを取り出してメール画面を開き、保護をかけているあの日のメールを瑞稀に見せた。
「うん、コレ。・・・・コレ見て・・良く待とうとか思ったね」
「あぁ・・。」
何がいいたいのかようやく分かった拓斗は改めて、そのメールを見る。
そこには、一文。“大好きだった”と書いてあるのみ。
瑞稀にとっては、精一杯の別れのメールだったんだろう。今も、思い出すと苦しいのか、辛そうな表情をしている。
「(ったく・・辛いなら聞くなよ・・)」
心の中でため息をついた拓斗は手すりから離れて、瑞稀の前に立った。
そして、にやっとした笑顔を向けた。
「そりゃ最初は、なんだよって思ったよ。でも、紫波から事情を聞いてからもう一回考えたんだけど。」
「・・うん。」
ニヤリとした顔に不服がありながらも相槌を打っておく瑞稀を見て、さらに拓斗は口角をあげた。
「“大好きだった”ってことは、今はそう思ってないってことだろ?でも、お前は俺のことが好きで何も言わずに離れた。なら、大好き以下じゃねえだろ?」
「・・・・・」
「そしたら、残るのは・・・」
「ストーップ!!!」
口角を上げていく拓斗の言葉を遮り、大声を出して途中でやめさせた瑞稀の顔は、先程の秋乃に騙されていた事を知った拓斗よりも真っ赤だった。
拓斗の、言おうとした言葉が分かった瑞稀は恥ずかしくなったのだ。
それが分かっている拓斗は、怒るわけでもなくただニヤニヤした。そして、笑顔で聞く。
「何だよ、大声出して」
「もういいよ!分かったから!!」
「はあ?お前から聞いてきたんだろ?なら最後まで聞いてけよ」
「ヤダ!無理!!」
「な・・お前なあ・・」
拓斗が、作りの呆れ顔を見せると瑞稀はジト目を向けた。
そして、ブランコから降りると拓斗の腕を引っ張った。行き先は、瑞稀の家。
「なんだよ」
「・・・部屋の方がゆっくり出来るから・・」
「・・・ああ、そうだな。・・お前、可愛くなったな」
「な!・・可愛げ無くてスイマセンでしたね!!」
「あー、やっぱ前言撤回。」
「くっ・・っ拓斗のバカ!!」
「バカじゃねえし!」
5年ぶりに、夫婦げんか?をした二人は途中で笑顔になって、瑞稀の家に行き、ゆっくりとした時間を過ごした。
(残るのは・・“愛してる”って言葉、だろ?)