投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

THANK YOU!!の最初へ THANK YOU!! 145 THANK YOU!! 147 THANK YOU!!の最後へ

THANK YOU!!-3


「・・・・」
「俺も、賞は一回とったけど・・。実は言うと、アレ、一番下の賞なんだ。」
「え!?」
「・・・だから。一番上の賞を取ったお前は、あの時の俺を・・。いや、俺自体を、超えたんだ。」
「・・・え・・・・?」

叔父の言葉に、理解が出来ずに唖然とする瑞稀。
そんな瑞稀の脳が理解する前に、叔父は言葉を続ける。

「俺は、お前が羨ましい。才能を無理やり開花させたんだから。お前の成長を嬉しく思うし、誇らしいと思うよ」
「・・・あ・・・え・・・」
「前に、“トランペッター”と言って、お前を馬鹿にしたろ?」
「・・・・」

その言葉はすぐに理解出来たので、とりあえず小さく頷いた。
中2の時に、言われた。団体賞を取れて喜んでいた時だった。

“チームに何人もいるパートで吹いて貢献しても、奏者じゃなくペッターとしか見られない。そんなんで喜んでんなら、個人賞なんて無理だな”と。

あのあと、ケンカして仲直りはしたものの、言葉に込められた意味はずっと解らなかった。


「アレさ。団体賞で喜んでいるお前を見て、イラついたんだ。個人賞を取れなくて悔しくないのかって。まあ、そんなわけなかったけど」
「・・・じゃあ、アレって・・」
「あの言葉はそのままの意味だよ。だから、だからこそ。最優秀演奏者賞を貰ったお前は、ペッターじゃない。目標だった俺を超えた・・演奏者だ」
「・・!!」

今度こそ、叔父の言葉が理解出来た瑞稀。
しかし、信じられない気持ちでいっぱいだった。

「・・・・お兄ちゃんを・・超えた・・?」

叔父は思いきり、でも、優しく瑞稀に掲げたままだったバッグを押し付けた。
それを、震える手で受け取った瑞稀は中身が重さで分かり、一度下げた視線を叔父へ向けた。目には、涙を貯めて。

「俺を超えたお前は、もう俺の使っていたトランペットを使う必要はない。
プロの演奏者になるんだ、瑞稀だけのトランペットを使え。」
「・・・・あ・・・」

瑞稀は、自分のイニシャルが刺繍してあるバッグのチャックを開けた。
中には新しい主人を待ちわびているかのように金色に輝く光り輝くトランペットが収められていた。
すると、祖母が小さい紙袋を持ってきた。祖父も、照れくさそうにビニール袋を手にしていた。
それらを、嬉しさと驚きのあまり言葉が出ない瑞稀に渡した。
瑞稀はトランペットケースを脇に抱えながら受け取った。
まず、祖母から渡された紙袋を開けた。それが何か分かった瞬間、瑞稀は顔をバッっとあげた。



THANK YOU!!の最初へ THANK YOU!! 145 THANK YOU!! 147 THANK YOU!!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前