THANK YOU!!-2
祖父に文句を言った瑞稀は自分の前の席が空いていることに気づく。
そういえば、と恵梨も口にする。
今日、叔父は午後からどこかへ出かけた。場所は聞いていない。
首をかしげる瑞稀と恵梨。
すると、タイミング良く、本人が帰ってきた。手に、何かを持って。
「あ、お兄ちゃん!お帰り!遅かったね!」
「おかえりなさいです」
瑞稀と恵梨が出迎えてくれた言葉に答えたあと、叔父は瑞稀の隣に立った。
「え?どうしたの?」
何事かと思った瑞稀は椅子から立ち上がって、そんなに遠くない叔父の顔を見上げた。
叔父は、瑞稀の顔をじっと見た。
そして、祖父母を一回見て、確認をする。二人も、それに応えた。
意味が分からない瑞稀と恵梨。それでも、恵梨は黙って様子を見ていた。
叔父はもう一度瑞稀の顔を見て、それから小さく笑った。
「な!何でいきなり笑うの!」
「・・・お前がトランペット始めた時は・・凄く身長差があったんだけどな」
「は!?いや、そりゃ、あの時は150cm満たなかったけど!?どうしたの!?」
笑われたことに不貞腐れた瑞稀は、ぷくっと頬を膨らませた。
いつもなら、それを指でつついて誤っていた叔父だが、つつかれもしなかった。
本当にどうしたんだろうと思っている瑞稀の前に、ネイビー色の少し細めのバッグが掲げられた。それは、叔父がこの部屋に入ってきてから、ずっと持っていたもの。
「・・・何、これ?」
「・・・お前が、トランペットを始めたいと言った時、正直悪いけど長続きしないと思った。」
「は?」
「でも、どれだけ吹いてもお前は飽きなかった。むしろ足りないとまで言った。」
「・・・う、うん」
言ったっけな・・と思いつつ、真剣な表情をしている叔父の言葉が気になり、何も言わずに頷く瑞稀。
「何で、そんなに飽きずに吹けるのか知りたかった。俺は、飽きてトランペットやめたから。」
「・・・それは・・」
「でも、この間、やっと分かった。トランペットが好きだから。俺が俺を越えたいっていう気持ち。・・俺が持てなかった気持ちの差だった。」