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恋愛戦隊ラブレンジャー
【その他 官能小説】

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恋愛戦隊ラブレンジャー-4

−スタジオからタクシーで15分ほど。目的のお店に着いた。
[テグジュペリ]
雑誌にも何度か載った事のある、有名な創作料理のお店。敷居の高そうな外観とは逆に、リーズナブルな価格で人気になっているらしい。
…カランカランッ!
『いらっしゃいませ。お一人様で?』
『あの…待ち合わせしてるんですが…』
『恐れ入りますが、お名前、お伺いして宜しいでしょうか?』
名前を告げると席まで案内された。テーブルには二人。すぐに愛美さんの顔が見えた。
『あっ、杏子ちゃん。』
『愛美さぁんっ!!』
両手で愛美さんの手を握る。優しく微笑みかけてくれた。顔を見たら、少し気持ちが軽くなった。
『あのさぁ、二人で盛り上がるのはイイけど、俺が取り残されてるの分かってる?』
隣に座っていた男性が、ちょっと不機嫌そうな表情で口を開いた。
『あっ、そうそう。紹介するわ。彼は明人。私の婚約者。』
『えぇぇっっっ!?』
『はぁっ!?』
二人の驚愕の声が店内にこだまする。
『あの、お客さま…』
当然の様に、ウエイターが来た。
『あっ、申し訳ありません。気を付けますんで。ほらっ、明人も謝んなきゃっ!』
『あ、すいませんでした…静かにしますんで。』
私も二度三度、頭を下げて椅子に腰掛けた。すると、比較的小さな声で明人さんが話し出した。
『おい、愛美。俺まだ、お前の両親にも会ってねぇだろ。それがいきなり婚約者ってのは…』
『イイじゃない。遅かれ早かれ、そうなるんだし。それとも、他にする予定の人でもいた?』
少しイジワルそうに言う愛美さん。
『い、いや…そんな意味じゃなくてさぁ。一応、俺にも心の準備ってのが…』
『あら、私は明人と付き合った瞬間から準備は出来てるわよ。もう、今すぐにでも次のステップに進みたいぐらい。』
二人のやり取りを見てると、とても楽しい。完全に主導権は愛美さん。明人さんを尻に敷いてる感じがする。
何か安心と言うか、イヤな事や悩みを今だけでも忘れさせてくれる感じがした。
愛美さんがウエイターを呼び、私達のオーダーを取った。私と愛美さんは魚のコースメニュー、明人さんはチキンのそれを選び、白ワインを注文した。
『ところで、杏子ちゃん…だっけ?』
食前酒を飲みながら、明人さんが私に声を掛けた。
『はっ、はいっ!』
『そんな緊張しなくてもイイよ。実は愛美から、君が何か悩んでるから力になれないか、って言われてさぁ。もしよかったら、俺にも話を聞かしてくれないかなぁ?』
優しい雰囲気と笑顔で、私に語りかけてくれた。
私は、改めて二人に事情を説明した。

−『殺陣かぁ…俺の専門外だな。』
オードブルを食べながら明人さんが言った。
『いくら専門外でも、何かヒントになる様な事とかないの?』
『剣道も殺陣も専門外だけど、俺なりの考え方なら言えるよ。それでもイイかな?』
小さくうなずく私。それを見た明人さん。ゆっくりと、しかしハッキリした口調で話しだした。
『基礎体力をつける事は賛成。アクションとか自分でやるなら尚更だね。でも、殺陣を習うのは反対だな。』
『えっ…何故ですか?』
『ふたつ同時にして、モノに出来る?一方を集中的に行なわなきゃ片手間になるよ。』
明人さんが言う事。当たっていると思う。
『でも、それじゃ間に合わないんですっ!何とかしたいんですっ!!』
声が大きくなった私。愛美さんが心配そうに見つめる。
『き、杏子ちゃん、そんな興奮しないで…』
『す、すいません…
でも私、焦ってるんです。みんなはそれぞれ目標を持って特訓に励んでます。何か私だけ取り残された感じで…』
『だからってふたつ同時にするのはムリがないかな?殺陣を習うのにも体力が必要だし、それなりの場所に出向いて行なうワケでしょ?そこで俺が言いたいのは、剣道の事。』
『剣道…?』
『そう。愛美から聞いたけど、杏子ちゃんってさぁ、高校で全国大会に出た事あるんでしょ?』
『はい…』
『また最初からやり直せば?何事も基本が大事。俺はそう思うけどね。』
言われてみれば確かにそうだ。焦るあまり、先を見すぎた。
殺陣も剣道も同じ刀を使う。基本からやり直すのなら、勝手の分かる剣道の方がイイに決まってる。
『でも…』
『ねぇ。杏子ちゃんにとって、剣道って何?』
愛美さんからの質問。それを聞いて考えた。私にとっての剣道。一体、何の為にしていたんだろう…
『もしかして、中学や高校の部活で強制的にやらされて、ツラさや苦しみしか記憶にない?』
『そんな事ありませんっ!確かに練習はツラかったけど、全国大会にも行けたし友達も沢山いたし、何より…剣道が大好きでしたっ!!』
つい、ムキになって答えてしまった。でも、自然に出た言葉。


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