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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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志を支えるものT-1

慌てる秀悠の左側に今度は葵が寄り添う。





「あなたはきっと良い医者になります。その手助けを・・・今は私にさせて欲しいのです」




「え・・・?葵さん医学の知識があるんですか・・・?」





(先程は薬草の名もわからなかった少女が・・・そんなことがあるのだろうか・・・)



秀悠の中で、葵に対しての"不思議"が徐々にカタチとなっていく。




「私に医学の知識はありません。ですが、あなたと同じ・・・人を救いたいという気持ちは私も仙水も同じなのです」




すっと葵が秀悠の左手に右手を重ねた。葵の手が秀悠を導くように老婆の胸元へ移動する。




「一番弱っているところを最初に治療しなくてはいけません」




心の臓の上で葵の手が止まり、秀悠は息を飲んだ。触れている葵の手から光が生まれ、はじけ飛ぶ。秀悠の見立てでわかる範囲の中で葵は治癒を施していく。





時折、老婆の体を透視しながら葵は秀悠の見立てに助言していった。




「他に気になるところはありませんか?」





「なぜだ・・・脈と熱だけが落ち着かない」




葵の問いかけに秀悠は焦った。何か見落としがあるのでは、と考えたとき・・・




「・・・細菌が入り込んだという可能性はありませんか?」





仙水が考える素振りを見せた。仙水の目からみても病に侵された部分はおおよそ完治している。




仙水の言葉に葵も頷き、秀悠を見やった。





「傷口から雑菌が入り込むことや、風邪のように知らぬ間に感染してる場合もあります」




はっとした秀悠は患者の女性の裾をまくった。青白い足首に赤く腫れあがった傷口がある。




「これだ・・・
大したことないからって傷を見せてもらえなかったんです・・・こんなになってるなんて・・・・」





彼がいうように早めに対処していれば、こんなことにならなかったかもしれない。入り込んだ細菌が病の悪化に拍車をかけてしまったとも限らないのだ。





がっくりと肩を落とす秀悠を慰めるように仙水がその肩に触れた。





「原因がわかれば治療法があります」





仙水に言われて秀悠は頷き、葵に頼み込んだ。




「傷口から感染した菌が体に回ってしまったと考えられます。体内の浄化をお願いします」




秀悠の診断をもとに葵が老婆の体へと力を注いでいく。







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