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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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愛のカタチV-1

思っていたことを口にしてしまっていたのかと思い、思わず口元を抑える秀悠。





「葵さん・・・?話、飛び過ぎじゃない?」





訝しげに眉間にしわを寄せた曄子の言葉に秀悠が顔をあげる。(曄子には聞こえていない・・・?私は言葉を発していたわけではないのか?)





「葵さん、あなたは不思議な人だ・・・眼鏡の時といい・・・」





と、言葉を続けようとした秀悠の家の扉が激しく叩かれた。





「先生助けてっ!!」





はっとして立ちあがった四人は扉をあけて駆け込んできた子供の様子をみてただ事ではないことを察知した。





「どうした?大丈夫だから落ち着いて」





「おばあちゃんが・・・っ!!」





涙をいっぱい溜めた少女に手を引かれ、彼女の家を目指して走る。ほどなくして彼女の家を発見し、足を踏み入れると・・・血の海に倒れている彼女の祖母の姿があった・・・





近所の大人たちが秀悠の指示で井戸の水を桶にためて家へと運んでくる。秀悠は素早く患者の気道を確保し、息があることを確認する。




慌ただしくなる周りの様子に気遣いながらも、もう薬草などではどうにもならない重い病であることを葵も仙水もわかっていた。




葵が目を凝らして老婆の体を見てみると、悪化した病が体中を蝕んでいるのがみえた。



「薬草では・・・病の進行を遅らせることは出来ても治すことは難しいようですね」




小声で言葉を発する仙水に葵は小さく頷いた。(人界はそろそろ王の手を離れる時期が来ている・・・人が成長し、己らの力で未来を切り開いていかなければならない・・・)





徐々の小さくなっていく命の灯を前に、葵は迷っていた。





「・・・どうなさいますか、葵様」





「私がここで助けても・・・秀悠はその志を見失う人ではないはず。助けましょう仙水・・・」




「仰せのままに」





仙水は軽く人払いをすると、室内の窓を閉め、老婆と秀悠、自分と葵だけを残した。





「仙水さん何を・・・」





戸惑う秀悠は薬草を配合し、老婆に飲ませようとしている最中だった。





「ここまで悪化している体には・・・薬草の効果は期待できません」





仙水が優しく秀悠の手に触れ、首を振った。




「で、ですが・・・っ!!
何もしないわけには・・・っっ!!」







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