学習U-1
「あ、仙水」
きょろきょろと葵の姿を探す仙水は葵の声に気がつき、片手をあげて返事を返した。
「葵様申し訳ありません、少し夢中になってしまったようです」
葵の姿をみて安心した仙水は、彼女の傍に立つ男に軽く頭を下げ挨拶した。
「おはようございます。朝早くから精が出ますね」
「おはようございます、お嬢さんのお連れの方ですか?」
男は仙水と葵を交互に見比べて、ふたりの間に漂う空気から親しい仲であろうことは把握できた。
だが、それ以上にふたりの美しさ、ただならぬオーラのような気迫にはっと息を飲んだ。
「あ・・・・
失礼しました、じろじろと見て不躾なまねを・・・」
照れたように頭をかく男をみて葵は小さく笑いかけた。
「名も名乗らずすみませんでした。
私は葵と申します。彼は仙水といいます」
葵と仙水は男に握手を求めると、戸惑ったように手を握り返してくれた。
「私は町医者をやっております秀悠(しゅうゆう)と申します。ここには主に薬草を採りに来ています」
秀悠の肩にかけられた鞄からはすでに採取した薬草の数々が顔をのぞかせている。
「とてもご立派です、その数を集めるのは大変だったでしょう・・・」
「はは、趣味みたいなものですから」
三人は歩きながら彼の住む町までやってきた。途中、冷たい風が流れ・・・仙水は自分の羽織っていた衣を葵の肩にかけると、葵がお礼を言って仙水に笑顔を向ける。そんな様子を見ていた秀悠は、
「・・・お二人は夫婦ですか?とても仲睦まじいですね・・・見てる私が照れてしまいますよ」
「あ・・・」
葵が口を開こうとすると、仙水がその言葉を遮ってこたえた。
「永遠の恋人のような関係です」
驚いた葵だが、仙水がそう思ってくれていることを嬉しいような恥ずかしいような気持ちで聞いていた。
「いいなぁ、永遠の恋人かぁ・・・
うわっ!!!」
唐突に秀悠の悲鳴があがり、仙水から視線を戻した葵は慌てて彼に駆け寄った。
秀悠が顔を抑えて尻もちをついている。目の前の木に激突してしまったらしい。
「大丈夫ですかっ!?お怪我は・・・」
仙水が彼を支えて立ちあがらせる。