嫉妬T-1
やはり人界の神官は葵にはなくてはならない要であり盾なのだ。
「俺がずっと傍にいてやれればいいんだが・・・」
「お前が女に熱をあげるようになるとはな・・・不思議な光景だ」
「俺もこんな気持ちは初めてだ・・・あいつだけは誰にも譲る気はない」
ぎゅっと握った拳には、彼女をとりまく神官の姿や・・・彼女が愛する人界の民たちの姿さえ含まれていた。
―――――・・・
真夜中に目が覚めた葵はゆっくりと体を起こした。(私眠ってしまったんだわ・・・湯浴みをしなくては)
静かな王宮を歩き、浴場へと足を踏み入れた。ちょうどよい湯加減に葵がほっとため息をつくと・・・
「・・・葵?」
はっとして声がしたほうへと目を向けると、湯けむりの向こうに九条の姿があった。
「あ・・・っ、
ごめんなさい九条、お邪魔してしまいましたね」
「・・・いいえ」
「九条はいつもこの時間に湯浴みを?」
「・・・・」
会話が続かずに、葵は視線をさまよわせた。
パシャと水音がして、水面が揺れた。それは自分がたてたものではなく、九条の動きによるものだった。
水面を見つめていた葵の瞳に九条の影がうつった。彼は無言のまま葵の隣に腰をおろした。
葵が九条を見上げると、漆黒の美しい髪に水が滴り・・・彼の肩や鎖骨あたりを妖艶に魅せている。
大人の男性の魅力を見せられ、九条にゼンの姿が重なる。
顔を赤らめてぱっと視線を外した葵は九条に背中を向けてしまった。
「葵は・・・強引な男が好きなのか」
「・・・え?」
思わず俯いた顔を上げると、背後から九条の腕が伸びて葵の体を抱きしめた。
「どうしたの?九条・・・」
しどろもどろになる葵の首元に九条の濡れた髪が肌を滑る。
「・・・・っ」
ピクっと肩を震わせた葵を背後から抱きしめたまま・・・九条の唇が首筋をなぞる。
指とは違うその感触に慌てた葵が九条の腕の中で逃れようと動き回る。
「ま、待って・・・っ!!」
より一層強く抱きしめられ、ピリっとした痛みが首元に走った。
「ん・・・っ」
強く目を閉じると、その痛みは消えて・・・柔らかい感触が首筋をなめあげる。