迫る兎-6
「しかし、本当にあたしの事、好きなの? やっぱ、イマイチ信じらんないなァ」
「ほ、本当ですよ。これ以上、どう言えばいいんですか?」
「……じゃあさ」
「はい?」
ヨウコは足を組み替えて、俺をじっと見つめている。
いつもの陽気な雰囲気、というより、どこか女を強く意識させるような艶っぽい微笑みを浮かべながら、呟いた。
「……あたしのこと思いながら、オナニーしてみた?」
「なっ……!?」
「あたしの事好きなのに、答えてくれないんだァ? な〜んだ、やっぱ嘘かなァ?」
「そんな」
ヨウコはニヤニヤしながら、俺の反応を伺っている。
この学校の生徒なら、ヨウコはその辺のアイドルよりもずっと、そういう妄想の対象になり得るだろう。
身近なだけに、あの生徒会長の豊かな胸を、ふっくらしたお尻を、等々考える生徒は少なくないはずだ。
心の中で考えることは、どんな人間でも自由である。
だから、俺もその恩恵にあずかって……心の中では何度もセックスしていた。
つまり、はっきり答えるなら、オナニーしているのだ。
「優柔不断な人って、あたし好みじゃないのよねェ」
「…………してます」
「は? 何を? よく聞こえないなァ?」
「オナニー、してます」
「……誰を想像して? はっきり言ってくれないと」
「会長を! 会長を想像して、週に三回は、オナニー、してます!」
俺がそう勢いで言い放つと、ヨウコは一瞬体を大きく震わせて、唇の周りをペロリと舐めた。
勢いとはいえ、俺は何を言ってしまっているのか。
でも、言わなければ、男として意識されない副会長に戻ってしまいそうな気がしたのだ。
ヨウコは、顔を少し赤くして、息を荒くしながらさらにとんでもない事を要求する。