迫る兎-3
「ん〜……リクオ君は、あたしとどうなりたいの?」
「それは……出来れば付き合って欲しいと言うしか……」
「どういう風に?」
「えっ? どういう? 普通にデートしたり……とかですかね?」
「ふぅん」
ヨウコはスクっと立ち上がって、入り口のドアの方に向かっていった。
そして、何故か鍵を掛けた。
ぽってりとした少し太めの唇をペロリと舌で舐める癖が彼女にはある。
そのセクシーな仕草はクラスの男子では何気に人気だった。
彼女の唇で、ああいう事をしてもらいたい、などとあらぬことを想起させるからだ。
その癖を間近で見て、俺は少しドキリとする。気のせいか瞳も潤んでいるような気がする。
入り口のドアから、今度は俺の方に向かってくる。
そのまま、ボロいパイプ椅子に腰掛ける俺の上に、お互い向かい合うような形でヨウコがのしりと座り込んできた。
エロい言い方をすると、騎乗位というのはこういう感じなのだと思う。
「会長、あの、ちょっとこれは……」
「ねぇ、リクオ君、本当にあたしのこと、好きなの?」
「……ええ」
「じゃあ、その気持ちを信じて、あたしの事も教えてあげる」
え、何を?
ヨウコは抜群に明るく、誰にでも打ちとける性格であると同時に、少々エキセントリックな所も持ち合わせているのは既に知っていた。
その不可思議さが、彼女の独特なカリスマ性に繋がってもいた。
そんな彼女が、色気のある唇を俺の耳元に近づけて、ポツリと呟いた。
「あたし、処女じゃないわ」
ヨウコの柔らかくもしなやかな肉体の感触を制服越しに感じながらも、俺の頭の中はハンマーで脳みそを直接殴られたかのような衝撃を受けていた。
やっぱり、そうだよな……。
いくら男が少ない高校とは言え、放置するにはヨウコは魅力がありすぎた。
まだ高校生なのにグラマーと言うしかないスタイル。人懐こくも、品のある顔立ち。
やはり男が黙って見逃すはずがなかったのだ。