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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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ゼンU-1

ドキドキと高鳴る心音に葵は戸惑っていた。初めて受ける口付けと、愛の言葉・・・






ゼンの"愛"は葵のもつ「慈愛」とは全く別ものだ。





「これが俺の気持ちだ・・・
お前も俺を選んでくれると嬉しい」






そう微笑むゼンは今まで見たことがないほど優しく、穏やかな瞳をしていた。






「ゼン様・・・」





ぼぅっとした目で葵がゼンを見つめていると・・・ふいに声がかかった。






「おーいっ!!どこ行っちまったんだ?おっさんも葵も。デザートいらねぇのかよ?」






蒼牙が広間から二人を探している姿が見えた。慌ててゼンから離れた葵の顔はまだ赤い。その初々しさにゼンは目元を緩ませた。





「葵・・・」






愛しい少女の髪をひとすくいし、ゼンの唇が触れた。







「あ、あの・・・っ」






「・・・急にすまなかったな、今日はこのまま雷の国へ戻る」






何か言いたそうな葵の言葉を遮るようにゼンは葵の頭をなでながら歩き始める。






「ここが雷の国だったら・・・
お前を抱いてるかもしれねぇな・・・それくらい今の俺はヤバイ」






振り向かずに葵へ言葉を投げかけたゼンの元にひとつの影が近づいた。






「・・・戯れもほどほどにしてもらおうか」






嫉妬のような憎悪を含めた大和の視線がゼンを鋭く射抜いた。






「・・・戯れだと?
冗談で"永遠の愛の誓い"など出来るわけがないだろう」





ゼンは大和の視線を受け止めるように彼を見つめた。すると、ふっと笑ったゼンの脳裏にはもうひとりの漆黒の神官の姿が浮かんだ。






「お前もか・・・」





「・・・何が言いたい」





苛立ったように大和が瞳の温度を下げると、ゼンが向き直った。





「世界が違うなどというのは何の障害にもならん。お前もあいつも・・・来るなら全力で来い」





「・・・あいつ?」






ゼンが視線を向けた先には、殺気を纏った九条が立っていた。その手には聖剣が握られている。





「九条・・・」





中庭からパタパタと駆けてくる足音が聞こえ、葵が顔を覗かせた。





わずかに紅潮している頬は、きっと先程のゼンの行為によるものだろう。






「大和?どうしたの?」








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