雪の贈り物-9
「あい♪あいやと」
黒猫をぎゅうっと抱いたメリルは満面の笑顔でお礼を言い、両親も頭を下げて馬車に乗り込んだ。
「ばーばい」
立ち去る馬車の窓から手を振るメリルに、2人も手を振る。
その2人の後ろで鼻水を垂らして号泣する男……トビィ。
「なんか感動の別れが台無しだわ」
『全くだ』
ずびずびと鼻をすする音に、2人は嫌な顔をして振り向く。
「よ゛かったです……ぼんどに……捨て子じゃなくて……」
トビィは赤くなった鼻をちーんとかんで、ずずーっと吸いあげた。
「今回は捨て子じゃなかったですけど……魔力持ちの捨て子って多いみたいですね」
メリルを拾ってから色々と調べたらしいトビィは、もう一度鼻をすする。
『ああ、お前はここの街産まれだからなぁ』
魔法学校のあるこの街では魔力持ちが産まれても誰も動じない。
「なんか僕に出来る事無いかなぁ?って考えちゃいました」
18歳のトビィは未だにやりたい事が見つからず、学校で講師をしながらぐだぐだしていたのだがメリルの事がきっかけになり人生の道が開けそうだ。
「ん〜ふ〜ふ〜」
そこでリンが怪しい含み笑いをおこし、グロウとトビィが気持ち悪そうに目を向ける。
「考えたんだけどぉ〜養護施設作ろうかなぁ?」
「『養護施設ぅ?』」
身寄りの無い子供を受け入れる施設……それを作ろうとリンは言っているのだ。
「幸い私財は余る程あるし、経営は寄付金とかで何とかするとして……魔力持ちを優先的に受け入れるの」
「魔力持ちを……ですか?」
「そう。さっきトビィが言った通り魔力持ちの子供ってのは厄介だから捨てられる事が多いの。しかも普通の施設じゃお断りの所が殆どよ」
『……お前、子供が欲しいだけだろ?』
「ふふふ〜施設の子は全部アタシの子供〜♪世の中の役にたって、アタシの希望も叶えられて……アタシって頭良い〜」
リンは自分の考えに満足してくるりと回る。
グロウは溜め息をついて尻尾を揺らし、苦笑いしながら顔を上げた。