女学生-1
最近弁当を運んで来る、婆さんがいる。白髪頭で顔は皺だらけ。
目は大きいが垂れ目で離れている。鼻は低くて団子鼻。
口は大きくて全体的に丸顔だ。ちょっと猫背で短い足でよたよた歩く。
低いだみ声で喋るが、歌を歌う時は綺麗なソプラノの小さな声を出す。
「なんで、あんたみたいな暇な爺さんがこんな栄養のあるもんばっかり食べているんだい?
精のつくもん食べたってしょうがないだろう。夜中に飛んで歩く積りかい」
黙って置いて行けば良いものを、毎回嫌味を言いながら置いて行く。
今日はウナギやとろろ芋や卵などのおかずを持って来た後、にやにや笑いながら言う。
「爺さん、これだけ毎日食べてたら、あたしにも種つけできんじゃないかい?」
わしは思わず食べ物を吹き出しそうになった。
「お婆さん、冗談いっちゃあいけないよ。
わしは勿論役にたたんが、あんただって種貰っても芽が出ない体じゃないのかい」
「もし爺さんのあそこが元気で、あたしも畑が荒れてなかったら、種まいてくれるかい?」
「ああ、もしわしのあれが元気で、あんたのあれが使えるなら、試してやっても良いが。
そんなことはありえないことだから、もう帰って寝た方が良いよ、お婆さん」
「あれまあ、ちょっと」
「なんだい?どうしたい」
「向こうから女子学生が3人も来るよ。車で送られてここに来たみたいだ。
さてはあの子たちを3人とも孕ませようってしてるのか、この助平爺い」
「おいおい、言いがかりはよしてくれ。
何か用事があって来たんだろうが、わしには皆目見当もつかん。
とにかく婆さんがいると、話がこじれるからさっさと帰ってくれ」
わしは婆さんを追い出すと3人の女学生を中に入れた。
婆さんは、わしのことを疑わしそうに見てからバイクに乗って行ってしまった。
わしはその後姿に向かって叫んだ。
「婆さん!事故るなよ。明日も弁当持って来てくれよな」
「あのお婆さん、お爺さんの恋人?」
そう言って来たのは白い襟で紺のセーラー服を着た長い髪をした女生徒だった。
「違うよ。それより何の用事で家に来たんだね」
するとそのロングヘアはわしの方を向きながらわしの後ろの背景を見るような目つきで言った。
「種付けの用事だよ」
「えっ?」
わしは区役所の立花保健婦から今日1名来ると連絡を受けていた。
だが3人とは聞いてない。わしは3人の顔を見回した。
すると真中のポニーテールの黒襟で白いセーラー服の子が手をそっと上げた。
「あのう……私がそうなんです」
わしは驚いた。
「で、他の2人は?」
するとロン毛の逆端にいたショートカットの紺のブレザーの子が言った。
「ユータンの付き添いだよ」
「ちょっと待った!」
わしは手で制すると、ポットからお茶を4つの湯のみに注ぎ、彼らに出して自分も飲んだ。
「ちょっと整理しよう。ユータンというのはポニーテールの真中の君か?
で、ショートカットの君は?」
「アーヤン」
ショートカットは口角を下げて不機嫌そうに言った。何故不機嫌なんだ?
「でロングヘアの私がヨッシーだよ」
言ったのは最初のロン毛の子だ。
何がヨッシーだ。ネッシーの親戚か?おっと核心的なことをまだ聞いてない。
「で、3人の関係はどうなってるんだ。制服がばらばらのようだけれど」
するとポニーテールが上目遣いにわしを見ながら言った。
「ち……中学時代の親友です」